樹徳優勝 30年ぶり甲子園へ

第104回全国高校野球選手権群馬大会 決勝
決勝を振り返る 6日から甲子園開幕

30年ぶりの優勝が決まった瞬間、マウンドに集まり喜ぶ樹徳の選手たち

県内65校61チームが出場した第104回全国高校野球選手権群馬大会決勝が、先月27日に前橋の上毛新聞敷島球場で行われ、ノーシードから勝ち上がってきた樹徳(桐生市)が、健大高崎(以下、健大)を6-4で破り、30年ぶり3度目の夏の甲子園出場を決めた。7年ぶり4度目の優勝を目指した健大は、2年連続で決勝戦の勝利を逃した。(文・谷桂、塩原亜希子、撮影・高山昌典、横山博之)

強気の攻めと堅守に健大及ばず

ノーシードから強豪校を次々と破り決勝まで進んだ樹徳と、第2シードから順当に勝ち上がってきた健大高崎との決勝は、樹徳の強気の攻めに健大の追撃、それを許さない強固な樹徳の守備と、最後まで目の離せない試合展開となった。

初回、樹徳は連打と死球で一死満塁のチャンスに、5番・舘野優真の中前打で先制を挙げると、6番・森颯良が走者一掃の三塁打を放ち失策の間に生還。一挙5点を挙げ主導権を握った。三回には、2死球と舘野の安打で1死満塁とし、7番・武藤右京のスクイズで1点を追加した。

一方、健大は三回、4番・清水叶人の適時打で1点を取り返すと、四回に9番・小玉湧斗の適時打で1点追加。五回には7番・山田琉衣、8番・関根啓衣太の連続安打で2点を挙げ4点とした。

2点差で迎えた九回表の健大の攻撃。無死1塁で、打席には主砲の清水。快音とともに放った右翼への大飛球は、樹徳の高木翼がフェンスにぶつかりながら好捕。飛び出していた一塁走者は戻れず併殺となり、好機を逃した。樹徳はエースの亀井颯久が最後の打者を遊ゴロで打ち取り、6-4で勝利。健大は樹徳を上回る14安打を放ったものの、相手の隙の無い守備を前に涙をのんだ。

全国大会は今月6日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕。樹徳は大会初日の第2試合、大分県代表の明豊高校と対戦する。阿久津佑太主将は「自分たちの野球をしっかりとして勝ちにつなげたい」と意気込む。

仲間を信じて甲子園で戦う
阿久津 佑太  あくつ ゆうた
樹徳3年 主将(伊勢崎三中)

昨年の秋大会は、コロナのため辞退。春大会も1回戦で利根商に敗退した。公式戦で1勝もできていない悔しさをずっと抱えていた阿久津佑太主将。井達誠監督(47)が「バネはひねれば、ひねるほど強くはじける」とチームを励ました。その後、夏にかける思いが変化。部員73人全員でのミーティングを重ねるたびに、お互いを「仲間」として思いやるようになり、全員で「甲子園出場」を誓い合ったという。

「夏の大会が始まってから、チームのやる気が出て、一戦一戦勢い付いた」と阿久津主将。前橋商、前橋育英、桐生第一、健大と立ち塞がるシード校をはねのけ、ついに頂点に上りつめた。「ベンチの仲間の励ましや、スタンドに来てくれた学校のみんなの応援が心強かった。大きな後押しがあったから、自分たちは頑張れました」と感謝の言葉を忘れなかった。

閉会式で優勝旗を持って喜びをかみしめながら行進する阿久津主将

6試合連続先発の亀井投手の好投と強固な守備が光った樹徳。チームの強さは何かと聞くと、阿久津主将は「亀井が本当に頑張ってくれたことが一番です。自分たちも守備として、亀井をバックアップできてうれしかった」と仲間を信頼して支える言葉が返ってきた。

30年前に甲子園に主将として出場した井達監督の思いも忘れない。「監督を甲子園に連れて行くことが実現できました。これからは、群馬県代表として自信もって、力いっぱい戦ってきたいです」と満面の笑顔を見せた。

 

楽しく笑ってプレーしたい
亀井 颯玖 かめい りゅうく
樹徳3年 投手(桐生広沢中)

粘り強い力投で6試合連続で先発。決勝では、9回150球を1人で投げ抜き、樹徳を勝利に導いたのは、右腕のエース亀井颯玖投手(3年)だ。強打を誇る健大打線に14安打を浴びたが、長打はゼロ。4失点に抑えて好投を見せた。今大会累計、742球を投げ続けたが、最後まで疲れを見せなかった。

勝利の瞬間、樹徳ナインと共にうれしさを爆発させた亀井投手に、試合後話を聞くと、「エースの自分が折れたら、チームが折れる。誰にも譲らないという強い気持ちで投げた」と語ってくれた。

信頼を寄せる堅い守備をバックに、一試合ごとに勢いを増した。監督からは「亀井が全部投げるんだぞ、踏ん張れ」と言われて気を引き締めたという。

試合は初回から、走者一掃の適時三塁打などで、一挙5点を獲得。「その5点に気が緩んでしまった部分もあった」と振り返る。中盤、じわじわとした健大の反撃に「ここは1点とられても大丈夫だぞ」とチームのみんなが言葉をかけてくれたことで、「気持ちが楽になり、投げ切ることができた」という。

スタンドの応援も届き、気持ちが高まる。夏休み前には、クラスメイトや地元の人から「ガンバレよ、甲子園行けよ」と声援をもらったことも大きな力になった。

様々な声援を胸に甲子園切符を手に入れた亀井投手。「楽しく笑ってやってきたい」と意気込む。「甲子園でも一戦一戦、守備を盛り立てて、いつも通りのピッチングをし、樹徳の校歌を歌いたい」と期待に胸を膨らませる。

 

九回に好捕をみせた2番右翼手・髙木翼
初回、走者一掃の三塁打を放った6番・森颯良
生還する5番・舘野を迎える3番・今野
チアや保護者らが一丸となって声援を送る
桐生駅で行われた樹徳ナインの出発式(同高野球部提供)

 

遠い〝あと1勝〟
佐々木 琉生 ささき るい
健大3年 主将(東京・杉並井荻中)

また決勝で敗れてしまった。昨秋、今春に続く準優勝。「勝ちきれない弱さが出た」と試合後に繰り返した。樹徳を上回る14安打を放った健大打線だが一歩及ばず。「チャンスで長打が出なかった」と悔しさをにじませた。

初回、2アウトから自身の右前打で出塁したが、後続が倒された。その裏、エース芹沢一晃が樹徳打線に捕まり5失点。一気に主導権を握られた。健大も三、四、五回と安打を集めてじわじわと追い上げる。最終回、主将の意地を見せた。先頭打者として左前打で出塁。続くバッターは主砲の清水。佐々木が「それまでの本塁打と同じ軌道を描いていた」と思った大飛球は、フェンス直前で失速しジャンプした右翼手のグローブに吸い込まれた。飛び出していた佐々木が戻れず併殺に。「冷静になれていなかった、申し訳ない」と振り返る。

「どんなにいい試合をしても結局勝てなければ意味がないと思っています」と声をふり絞った。今年もあと1勝だった。届きそうで届かない甲子園出場は来年、後輩たちに託す。

決勝で2安打1打点を挙げた健大の4番・清水
四回、9番・小玉の適時打で生還する6番・狩野

高校野球選手権群馬大会写真展 県朝日会
県朝日会は、今月26~28日の午前10時から午後7時まで、イオンモール高崎2階のイオンホールで第104回高校野球選手権群馬大会写真展を開く。今大会に出場した全65校61チームの入場行進と初戦のプレー写真、準決勝、決勝の模様など約3000点を展示する。入場無料で予約不要。県朝日会(027・221・5765、平日午前9時~午後4時半)。

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