日本画家 須藤和之さん
前橋ヤマトギャラリーで個展
草花の芽吹きや命の煌めきなどを繊細な筆致と色彩で描く日本画家・須藤和之さん(40=前橋)の個展「絆‐lien」が、前橋のヤマト本社1階ギャラリーホールで開催中だ。東京芸大大学院で日本画や保存修復を学んだ須藤さんは高度な技術と洗練された構図、華やかな色使いが高く評価されている。今展ではヤマトが発行する季刊誌や市内の企業カレンダーに描いた原画、夏をテーマにした新作を発表。高みを追求し続ける気鋭に個展への思いを聞いた。
繊細な筆致と鮮やかな色彩で草花や郷土の風景を表現
―今展の展示構成を教えて下さい
6年前から手掛けているヤマト季刊誌「和s YAMATO」の表紙絵原画22点と中央電機商会の2022年のカレンダー原画16点、赤城山をモチーフにした新作2点の計40点を展示しています。表紙絵原画では、ヤマトビオトープ園の植物、カレンダー原画は前橋の四季をテーマにした風景画を描いています。季節の草花や風景と共に表現の変遷も楽しんで下さい。
―モチーフはどのように選ぶのでしょう
ヤマト本社のビオトープ園に定期的に通っていますが、園内を歩いていると草花の色合いや佇まいなど、何かしらピンとくるものがあるんですね。カレンダー原画も一緒。故郷の風景を見つめ直すと、コレという原風景が立ち上がってきます。私の記憶や感情と、自然の息吹、突き詰めて言えば「命」が巡り会った瞬間、「描ける」という手応えが得られる感じですね。
―タイトル「絆」に込めた思いは
表紙絵やカレンダー原画を描く以前から絵を描いていましたが、画家として歩んでこれたのはヤマトの故・新井孝雄会長や中央電機商会の故・高浦孝好会長とのご縁があったからこそ。お二人ともトップとして時代を変革していく発想力と行動力、周りの人への深い愛情に満ちていました。私もあんな風に自分の目指すものに挑戦していきたいと思っています。表紙絵とカレンダー原画は、私の画家としての歩みそのもの。昨春と今春に亡くなったお二人に、心からの感謝を込めて「絆」というタイトルを付けました。
―表紙絵とカレンダー原画を制作する上で心掛けていることは何でしょう
どちらもお客様と企業を繋ぐ大切な架け橋なので、企業の思いが伝わるような絵を描きたいと思っています。とはいえ、要望に応えるだけでは単なる商品になってしまうので、そこに「自分」を落とし込まないといけません。画面全体に描き手の生き様が「匂う」ような作品作りを大切にしています。
―来場者にメッセージを
植物を観察していると、それぞれが譲り合って生きていることが分かります。独り占めすると周りも自分も結局枯れてしまう。正に「共生」ですよね。植物から学ぶことは多く、「こんな風に生きれたらな」と思うこともしばしば。会場では自然が発している優しいエネルギーや純粋な美しさに触れ、心和ませたり、ほっとしてもらえたら嬉しいですね。 (聞き手・中島美江子)
「須藤和之展 絆-lien」 ヤマトギャラリーホールで9月18日まで開催。午前10~午後5時。土日祝、8月12、15、16日は休館だが、13、14、9月17、18日は開館。同社(027-290-1800)