群馬クレインサンダーズ

東地区3位と成長を続けるサンダーズ
初のCS進出へ向けチーム一丸となって戦う

プロバスケットボールリーグのB1リーグに所属する群馬クレインサンダーズは、2月5日終了時点で20勝14敗、勝率0・588と東地区3位につけた。今季を「バスケット文化を作る1年目」と捉え、試合をこなすごとに課題を修正しながら成長を続けている。「この戦いをチームのスタンダードにしたい」と水野宏太ヘッドコーチ(HC)が口にした1月29日の琉球ゴールデンキングスとの一戦を中心にサンダーズの奮闘を紹介しよう。 (星野志保)

2年前の高校3年次に特別指定として琉球でデビューを飾り、今季はサンダーズの選手として古巣と戦ったハーパー・ジャン・ローレンス・ジュニア(右)。攻撃でも3Pシュートを連続で決めるなど、攻守にわたり能力の高さを見せた(2023年1月29日、琉球戦、太田市運動公園市民体育館)

琉球に敗戦も質の高い試合
「ディフェンスで我慢できず、相手に気持ちよくプレーさせてしまった。相手の強みを出させないようにするにはどうするか、後半に関してはアグレッシブなアタックをしていたのでオフェンスでどうやっていい状況を続けていくかを意識して、明日は戦いたいと思います」
28日の琉球戦(太田市運動公園市民体育館)に74―83で敗れ、こう課題を口にした水野宏太ヘッドコーチ(以下HC)。前半で30―45と15点差をつけられ、後半に攻撃で盛り返したものの、前半の大差が最後まで響いた。

翌29日には、エースであるトレイ・ジョーンズが体調不良で急きょ、試合に出られない事態に陥いるも、ジョーンズに代わりスタメン出場した八村阿蓮が体を張って空中戦を制した。

また、キャプテンの野本建吾がリバウンドに飛び込んだり、3ポイントシュートを決めたりと攻守にわたり活躍。特別指定として加入したハーパー・ジャン・ローレンス・ジュニア(東海大2年)も、サンダーズでの初試合にもかかわらず、3ポイントシュートを2本連続でリングに沈めるなど能力の高さを見せた。こうしたベンチメンバーの活躍もあり、試合の流れを引き寄せた。

試合後、琉球の桶谷大HCも「ハーパー選手や野本選手といった予期していなかった選手にやられてしまった」と漏らしたほどだ。

ハーパーはディフェンスでも活躍しチームに勢いを与えた。「B1ではトップレベルのボールプレッシャーのかけ方だったし、なかなか1対1では(彼のディフェンスを)はがせない。ボール運びでも結構苦労した」と琉球の桶谷HCもハーパーの能力の高さに舌を巻いた。

3Q終了時点で58―48と10点差をつけたサンダーズだったが、4Qでジャスティン・キーナンとケーレブ・ターズースキーのファウルがかさんで、ディフェンスで相手に強くプレッシャーをかけられなくなったところを琉球に突かれた。残り12・1秒、キーナンのフリースローが1本決まったところで、琉球が後半3回目のタイムアウトを要求。スコアは70―68とわずか2点差に。タイムアウト後の相手のサイドラインからの攻撃で敵にシュートを決めさせなければ、そのまま逃げ切れる状況だった。

しかし、相手に簡単にディフェンスを突破され、70―70の同点に。4Qでターズースキーがファウル5つで退場し、キーナンもファウル4つで、もう1つもファウルが許されない状況。スピードを誇るジョーンズは体調不良でベンチ外。こうした厳しい状況の中で臨んだオーバータイム(延長戦)だったが、全力で闘っていたサンダーズの選手たちに、「相手(の攻撃)を止めるだけの足は残っていなかった」(並里成)。
試合は77―84で敗れたものの、「ハードにしっかりプレーをして、自分たちの戦う意思を見せるゲームにしたい」と試合前に水野HCが選手にかけた言葉通り、今季一番と言っていいパフォーマンスを見せてくれた。試合後には、「今日のゲームに関しては選手たちに言うことはない。さらに継続してこのような質の高いゲームを見せられるようにすること。そしてそういうチームになりたい」と水野HCは選手たちの頑張りを称えると共に、チームの方向性も示した。

三河戦 全員でものに
2月4、5日のシーホース三河戦は、前節の琉球戦からの成長が見られた試合だった。三河の外国籍選手2人が欠場していたのもあったが、4日はジャスティン・キーナンと野本らが攻守で奮闘し87―72と快勝。翌5日の試合では75―69と接戦をものにした。中でも5日のゲームをリードしたまま終わらせるところで五十嵐(圭)、ジョーンズ、並里という3人のボールハンドラー(司令塔)を同時にコートに置くという、これまでとは違った形の選手起用を試みた。

「相手が何か違うことをしたとしても対応できるような形をとり、中でも五十嵐選手がベテランとしての経験を生かしチームに落ち着きをもたらすプレーをしてくれた。チームとしてのいろいろな形が見え、これからの自分たちの成長と厚みになってくれる試合になった」と水野HCはベテランの活躍を嬉しそうに語った。この三河戦は、2日間ともに全員が出場し、全員で勝ち取った勝利だった。

今季、残り24試合となったが、琉球戦や三河戦で見せた戦いをスタンダードにして、5月に開催されるチャンピオンシップ(CS)への進出(※)を目指し、チーム一丸となって戦っていく。

「ナリトのアシストパスが一番怖かった」(琉球・桶谷HC)、「人を落ち着かせる雰囲気が増した。間違いなく、彼が群馬のチームリーダーだと思う」(琉球・岸本隆一)と相手のHCや選手に言わせるほど、古巣との対戦で奮闘した並里成(同)
2月4、5日のシーホース三河戦で、ベテランとしての経験値をチームに注ぎ込み、勝利に貢献した五十嵐圭(2月5日、三河戦、同体育館)
ホームでの三河戦後に毎回、会場に来てくれた観客に丁寧にあいさつをする水野宏太HC。2月4日は2718人、5日には2943人が来場(2月4日、同)

※注 CS進出の条件=現在、B1には24チームある。東地区、中地区、西地区の各地区上位2チーム(計6チーム)と、それらを除く計18チームのうち上位2チームの、あわせて8チームが、CSに出場できる。

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