穫れたて、熟れたてを味わおう
赤くて栄養価の高い緑黄色野菜〝トマト〟。生産量が全国9位(農林水産省令和3年度作物統計より)の群馬県では、春のこの時期、伊勢崎や藤岡などの平たん地で収穫されるトマトが出荷のピークを迎える。県内の産地やブランド、3月に行われた品評会やイベントの様子を紹介する。地元でしか手に入れられない新鮮さとおいしさを味わってみては? (上原 道子)
平地のハウス 出荷ピーク
糖度・甘み・コク増す4月
群馬のトマトの収穫期には、12~6月の「冬春期」と7~11月の「夏秋期」の2期があり、年間を通して生産が行われるが、各時期で産地が異なる。
そもそもトマトの原産地は、南米・アンデス地方の高原地帯。少雨で日光の量が多いことや、昼夜の寒暖差があることなどがトマト栽培に適した自然環境だ。こうした条件に当てはまる群馬では、日照時間が長い「冬春期」は平たん地で、また、暑さが厳しくなる「夏秋期」は、涼しくて昼夜の寒暖の差が大きい高原地帯で盛んに作られる。
「冬春期」のトマトは、伊勢崎、みどり、太田、藤岡、高崎、前橋などが主な産地だ。ほとんどがハウス栽培で、特に、日照時間が増す3~5月にかけては肉厚で色も濃くなり、糖度やコクが増したおいしい果実が収穫されるという。
産地独自ブランド名でおいしさをPR
県園芸協会野菜部会会長の寶船(ほうせん)正夫さん(75)によると、群馬では甘みと酸味のバランスが良い大玉「桃太郎」や桃太郎を親とする「ハウス桃太郎」「桃太郎はるか」など様々な品種が作られている。大玉のほかに、近年は、産地が限定的な県育成品種のトマト「甘しずく」(前橋)や、平均糖度9度以上のフルーツトマト「ブリックスナイン」(太田市新田地域)など小ぶりで甘い食べきりサイズのトマトも人気だ。
また、各産地で栽培する品種は農家によって様々だが、伊勢崎の「上州娘トマト」、藤岡の「ふじ娘トマト」など、地域共通のブランド名を独自に付けて販売しているところもある。一方、高崎市木部町のトマト農家が手掛けるブランドトマト「うれっ娘トマト」は、「麗容」という品種。見た目の美しさに加え、完熟してから収穫するため食味の良さが特徴。町内にあるJAたかさきトマト選果場に隣接する直売所で6月まで販売しており、地元で穫れた新鮮なトマトを購入することができる(4月は原則、日・月・水・金曜の午前10時~正午、GW中は変動あり、027-347-0516)。
各エリアの農協に出荷する農家が丹精込めて育てた自慢のトマトは、青果物を分類する各選果場などで選別、箱詰めされ、市場へ送られる。早ければその日のうちに地元の直売所で販売される。なお、「冬春期」の県産トマトは、各JAの直売所をはじめ、県内のスーパー、量販店などで6月ごろまで販売される。
品評会では、高崎のトマトが最高賞
県産のトマトやキュウリなど施設(ハウス)栽培野菜の鮮度や見た目などを審査する第37回県施設果菜類品評会が先月16日に県庁で開かれ、高崎の「うれっ娘トマト」生産部会会長の塚越正幸さんが栽培した大玉トマトが最高賞の群馬県知事賞を獲得した。
同品評会は、県、JA全農ぐんま、県園芸協会が野菜の品質や生産性などの向上をねらい毎年、出盛り期に合わせて開催。今年は大玉トマト、フルーツトマト、ミニトマト、キュウリの全40点が出展され、鮮度、外観(傷や割れがない)、形状(形の良さ)、揃い(大きさがそろっている)、色沢(いろつや)の5つの観点から審査員による合議制で賞を決定。出品された野菜は受賞決定後に、一般来場者に販売された。
初開催のトマトまつり大盛況
伊勢崎
先月25日には、今年度、伊勢崎の選果場創立50周年を迎えるJA佐波伊勢崎トマトセンターで、トマトの選果体験やトマトの無料配布、キッチンカーによるトマト料理の提供、トマトクイズや箱の積み上げ大会など、トマト尽くしのイベント「トマトまつり」が初めて開催された。
同センターは、各農家が収穫したトマトを持ち込み、色、つや、形、傷の有無など外観によって等級に分けたり、大きさによって分類する施設。主催した同センター利用組合の秋間則人組合長(55)は「地域との交流、トマトセンターのPR、トマトの消費拡大を目指し、『50周年プレイベント』として開催した。今年度は規模を拡大して実施予定。これからも組合員みなで協力し合い、安心、安全で美味しいトマトを作ります。多くの人にたくさん食べていただきたいですね」と話した。
同イベントにも野菜の販売で出店していたJA佐波伊勢崎の農産物直売所「ファーマーズマーケット からか~ぜ」(伊勢崎市田中町、 0270-50-0831 )では出荷最盛期に合わせ、トマトの売り場面積を拡大して販売する予定という。