前橋商 逆転サヨナラVで甲子園へ

第105回 全国高校野球選手権記念群馬大会 決勝

逆転の瞬間、ガッツポーズをする前橋商8番の高橋と選手たち

県内65校60チームが出場した第105回全国高校野球選手権記念群馬大会の決勝が7月27日に、上毛新聞敷島球場(前橋市敷島町)で行われた。接戦の末、前橋商が桐生第一を3―2の逆転サヨナラで下し、13年ぶり6回目の優勝を果たした。公立校が夏の甲子園に出場するのは11年ぶりとなる。一方、15年ぶり10度目の優勝を目指した桐生第一は、七回表に勝ち越したものの、九回裏の逆転で、目前の勝利をつかみ取ることができなかった。前橋商は、8月6日に阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開幕する全国大会へ県代表として出場する。
(谷桂、上原道子、塩原亜希子、撮影・横山博之)

強豪私立を倒し 公立勝利

準々決勝で対戦した前橋育英や、準決勝で当たった昨年覇者の樹徳など、私立強豪校を次々に破り、勢いに乗って決勝まで進んできた前橋商。一方、準決勝で春夏連覇を狙う健大高崎を下し、投打ともに強さを見せて勝ち登ってきた桐生第一。2007年以来16年ぶりに激突した両校による頂上決戦は、終盤まで目の離せないシーソーゲームが展開された。攻防戦の末、ついに前橋商が逆転勝ちを収めた。

三回裏、先制したのは、前橋商。1番金子蒼生による犠飛で、まず1点が入る。

すると、桐生第一は五回表、8番ドミンゴスの犠打と、相手の失策で同点に追いついた。また、七回には盗塁で進んだ三塁走者ドミンゴスが、9番投手の中村駿汰による適時打でホームへかえり、勝ち越しに。

ところが、前橋商は1点差で迎えた九回裏、宮西大和の内野安打と藤森壮太の犠打で、2死二塁。その好機に途中出場の8番高橋一輝が強気に適時打を放ち、同点に。さらに庭野涼介の右前打、四球で2死満塁。最後は今大会でチーム最多打点の強打者、斎藤隼が桐生第一エース中村の内角寄り直球を右前適時打としてはじき出し、3―2の逆転勝利を決めた。

前橋商は、投打で活躍した先発のエース坂部羽汰が7回までピッチング、2年生の清水大暉が継投した。桐生第一は、五回に左足首に強打を受けながら、完投した左腕のエース中村を擁して戦ったが、あと一歩のところで涙を飲んだ。

今大会、声を出しての応援ができるようになり両校の大応援団は、選手を勢いづけようと懸命に声援を送り、チャンスの度にスタンドは大いに盛り上がった。

甲子園切符を手にした前橋商は、1日、関係者に見送られながら同校を出発。3日の抽選会を経て、6日から始まる甲子園球場での全国大会に臨む。住吉信篤監督は、「普通の公立高でも、甲子園に行ける。今まで通り、全力で取り組み、群馬の代表として力を発揮したい」と意気込みを語った。

二回裏、前橋商打線を三者凡退に抑える桐生第一・中村投手
七回表、勝ち越しのホームを踏みガッツポーズをする桐生第一・ドミンゴス
エース坂部に代わり終盤に登板した前橋商・清水投手
九回裏、宮西の生還で同点に追いつき喜ぶ前橋商
センター前に 決勝打を放った前橋商・齋藤
優勝の歓喜に沸く三塁側前橋商スタンド
座り込んで肩を落とす桐生第一・星野捕手
学校の壮行会で力強く決意表明する前橋商の真藤主将

主将&投手インタビュー

優勝した前橋商の真藤允宗主将と坂部羽汰投手、惜しくも準優勝となった桐生第一の石塚快士主将らのコメントから、決勝を振り返る。

前橋商 3年
真藤 允宗主将(渋川子持中)
甲子園を夢見て公立へ入学、念願叶う

決勝後のインタビューでは、「このために、たくさん毎日練習してきました。やっと成果が出せて、本当にうれしい気持ちでいっぱいです」と胸を張って答えた真藤允宗主将は、部員78人をまとめる精神的支柱でもある。渋川子持中から前橋商に入学したのは、「公立高校に入って、甲子園を夢見たかったから」。公立の雄・前橋商が「逆転勝利できてとてもうれしい」と喜ぶ。

打者としては、4番を担い、昨年の覇者だった樹徳戦では、チーム20安打のうち真藤が4安打を放った。長打力があり、強肩強打のうえ、守備範囲も広いプロ注目の選手だ。

7月31日には前橋商(前橋市南町)の体育館で壮行会が開かれ、真藤主将は、「苦しい場面で皆さんの応援が後押しになった。甲子園では、1試合でも多く戦えるように頑張ります」と決意を語った。

前橋商 3年
坂部 羽汰 投手(前橋大胡中)
ケガを乗り越え、大舞台で投打に活躍

前橋商の主戦、坂部羽汰投手は7回89球を投げ、被安打5、自責点0に抑え好投した。2年の夏までケガや病気で休み、昨年秋から背番号1番で投げている。決勝戦では、立ち上がりから変化球でストライクを取り、内角ストレートで決めるコントロールのよいピッチング。七回では勝ち越されたが、「逆転できると仲間を信じた」と笑顔で気持ちを切り替えて、2年生の清水大暉投手にマウンドを託した。攻撃でも坂部は、先制点など3打数3安打をたたき出し大活躍。「決勝で打てた」とほっとした表情を見せた。

あこがれの甲子園に向けて、米山泰成捕手とのテンポあるバッテリーに磨きをかける。「県の代表として精一杯の投球をしたい」と意気込みをみせた。

前橋商出身で「全員野球」を目標に掲げる住吉信篤監督を胴上げする選手たち
三塁側から声援を贈る前橋商の応援団
優勝が決まった瞬間、スタンドで大喜びする野球部員たち

桐生第一 3年
石塚 快士 主将(伊勢崎境南中)
キャプテンとして最後まで胸を張って

勝利を目前にサヨナラ負けを喫した桐生第一の石塚快士主将は、「『最弱』と言われ続けていた僕らが決勝まで勝ち上がることができたのは、監督や指導者、メンバーに入れなかった部員たちのお陰。勝って恩返しすることができず本当に悔しいです」と涙をぬぐった。だが、主将としてチームを一つにまとめようという思いは、グラウンドを去るまで持ち続けた。

肩を落とす中村投手には、「お前が一番頑張ったんだから胸を張って帰ろう」と励まし、泣き崩れる選手たちにも「胸張っていくぞ」と声をかけた。「ダメダメなキャプテンだったけど仲間に支えられてここまで来られた。自分が正々堂々としていなければいけないと思った」と、前を向いた。チームの支柱としての役割を最後まで演じ切った石塚の夏が、終わた。

試合後、桐生第一のエース中村に駆け寄る石塚主将

味方の好プレーに湧く桐生第一の大応援団

群馬大会を盛り上げる
群馬県朝日会

甲子園の勝利という目標があるためか、だるまの目入れはまだ小さい。頭には「挑む」の文字

朝日新聞社と群馬県朝日会(井口文英会長)は、大会中に球場の飾りつけや、トーナメントボード設置、応援だるま提供などで、群馬大会を盛り上げた。

開会式で登場したトーナメントボードを見る保護者や生徒ら

トーナメントボードは、6月に行われた組み合わせ抽選会に使用したものを、開幕に合わせて上毛新聞敷島球場に再び設置した。応援だるまは、開幕と決勝の際に、球場に登場。各校が意気込みや目標などメッセージを書いただるまを、優勝校の前橋商に寄贈して勝利を祝福した。

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