ペットも人も、夏はマダニに気を付けて!
国内で人の死亡例も報告
夏本番。アウトドアなどを楽しむ機会が多くなるが、人や動物から血を吸う機会を狙っている「草むらの吸血鬼」マダニをご存知だろうか。マダニは人に健康被害をもたらすウイルスを保有している場合があり、人は主に直接刺されて感染するほか、ダニの咬傷によりウイルスを保有した犬猫を介して感染することも報告されている。そこで犬や猫のマダニ寄生予防や刺された時の対応について、県獣医師会会員で人獣共通感染症の啓発に取り組むワンヘルス委員会の狩野友秀委員長に聞いた。(飯塚ゆり子)
―マダニと室内にいるダニとは違うのですか?
マダニは、体長は3~4㍉で森林や庭の草むらなどに生息しています。室内にいるダニとは違い、成長するために人や動物の血液を吸血します。両者は全く異なるものです。
―マダニが媒介する感染症とは?
最近では重症熱性血小板減少症候群(SFTS)が深刻です。2013年、初めて人の死亡が報告されました。西日本中心に発生していますが、近年では関東でも発症が報告されています。
全国の感染者は、年間約100人、発症者の致死率はおよそ6.3~30%です(国立感染症研究所の調査)。主な症状は、発熱、嘔吐、下痢、食欲低下などで、有効な治療薬はありません。犬猫も感染しますが、特に猫の致死率は、人より高い傾向にあります。
―感染ルートを教えてください
主な感染経路は、SFTSウイルスを保有するマダニに直接咬まれること、同ウイルスを保有する犬猫との濃厚接触です。マダニが保有するウイルスがペットを介して人へ感染したと考えられる症例が報告されています。17年に、野良猫にかまれてSFTSを発症した女性が死亡したというニュースは、記憶に新しいと思います。
―人や犬猫への予防法は?
マダニの活動が盛んになるのは、3~11月頃。人が畑仕事や森林、草むらに入る場合は肌の露出を避け、長袖、長ズボンを着用すること。そしてペットの予防も忘れずに。犬猫専用の予防薬は、かかり付けの動物病院に相談してください。皮膚に滴下する液状の薬と、おやつのように食べるチュアブルタイプがあり、いずれも1カ月ほど効果が続きます。
最近、海や山など自然の中で犬と一緒に過ごす機会が増えており、マダニの感染リスクが高まっていると考えます。犬を散歩させる際は草むらに行かないように、散歩やレジャーの後はペットの体をさわって確認を。猫は室内で飼育することをおすすめします。
―吸血しているマダニを見つけたら?
マダニは吸血すると約1㌢になります。咬みつくとセメントのような物質を分泌して固定するので、無理やり引き抜こうとするのは禁物。皮膚をいためて化膿することもあります。犬や猫は動物病院で、人は最寄りの医療機関を受診して取り除くのがいいでしょう。この夏、ペットも私たち人もマダニには十分に気をつけましょう。