90歳の現役画家 田中明子 さん
芸術文化功労賞受賞記念展 ヤマトギャラリーで2月16日まで
大胆な構図と鮮やかな色彩に満ちた油彩画を創作する画家、田中明子さん(高崎=90)の個展が、前橋市古市町のヤマト本社ギャラリーホールで開催中だ。令和4年度に初めて創設された「企業メセナ群馬芸術文化功労賞」の受賞を記念した展覧会で、高校時代の初期作品から最新作まで75年に及ぶ画業の全貌を紹介している。
【女流画家の活躍の場作りに尽力】
地域貢献の一環としてギャラリーを運営するヤマトは、群馬の芸術文化振興を目指し同展を企画。1933年東京生まれの田中さんは45年、東京大空襲を受け一家で高崎に転居。幼い頃から絵が好きで、終戦後は独立美術協会会員の中村節也が指導する高崎洋画研究会に学ぶ。52年に武蔵野美術学校(現・武蔵野美術大学)に入学し、卒業後の59年には高崎の珍竹林画廊で初個展を開く。 結婚後、嫁ぎ先の家業の経理を担いながら、69年に創立した「ぐんま女流美術協会」の設立メンバーとして活躍。以降、県展や独立展で入選を重ねるなど精力的に活動を続ける。画家として自らの画風を確立すると共に、女流画家たちの創作の場作りに尽力した功績が称えられ今回、初の文化功労賞受賞に繋がった。
【初期から代表作、最新作まで33点】
今展は130号の大作を中心に、10代の頃に描いた油彩画から代表作、新作まで33点で構成。風景や草花をモチーフにした作品もあるが、出品作の多くは人物像だ。「モデルはいません。全て想像なので、自分の好きなように描いています」と田中さん。人物画のコツは「手と足をしっかり描くこと」という。一人息子の田中充さん(46)は、「小さい頃、よく手足のモデルをさせられました。顔は一度も描いてもらった記憶がありません」と明かす。
【人間の面白さ、奥深さに魅せられて】
親子や裸婦、外国人、恋人などを描いた人物画は登場人物に加え、絵肌の質感もツルツルだったりザラザラだったりデコボコだったりと実に多彩。明快な構図と華やかな色彩が躍動する画面は表情豊かで、観る者を一瞬にして惹きつけるオーラを放つ。75年の長きに渡る画業から伝わってくるのは、「大好きな絵を描き続けたい」という強い意志だ。人間の面白さ、奥深さに魅せられ毎日のように絵筆を握る「90歳の現役画家」。「人まねではないもの、精神的なものを捉えたいと常に思っています。独自の表現を求め敢えて難しいことに挑戦してきましたが、我ながらよくこんなに沢山の絵を描いてきたなと驚きましたね」と笑う。
【卒寿の今も旺盛な制作意欲は衰えず】
濁りのない、美しい色遣いの油彩画や水彩画が並ぶ個展会場は、明るく清々しい雰囲気が漂う。卒寿の今も旺盛な制作意欲は衰えず、豊潤でみずみずしい作品を生み続けている田中さんは、「アトリエに仕舞い込んでいた絵がギャラリーに飾られ、まるで息を吹き返したかのように生き生きとしています。これまで描いてきた人物画の多くを展示していますので是非、お気に入りの1点を見つけてもらえたらうれしいですね」と笑顔で語る。 (中島美江子)
【田中明子展】
入場無料。2月16日まで。午前9時半~午後5時。
土日祝日休館だが2月10~12日開館。同社(027-290-1800)