三位一体で「前橋の美術」盛り上げよう! 市民&美術館&ギャラリーがタッグ

アーツ前橋を核に開かれている「前橋の芸術」

 

「つながり」テーマに47作家が発表
アーツ前橋&街なかで企画展がスタート

三位一体で前橋の美術を盛り上げよう! 市民と美術館と画廊がタッグを組んだ企画展「前橋の美術2020‐トナリのビジュツ」が、アーツ前橋を中心に街なかで開かれている。「つながり」をテーマに、国内外で活躍する前橋ゆかりの47作家が多彩な作品を発表。市民である作家主体の企画展を、公立美術館や画廊で同時展開するのは全国的にも珍しく、地域の文化振興を担う三者の繋がりに大きな期待が寄せられている。(中島美江子)

実行委メンバー

【全国的にも珍しい市民主導の企画展】

2017年に初開催された「前橋の美術」は、今回で2回目。前橋ゆかりの作家や学芸員、画廊主ら14人が、17年末に実行委員会を立ち上げ、企画展のテーマ設定や参加作家の選考など、2年かけて準備を進めてきた。実行委の一人である、アーツ前橋の住友文彦館長(48)は、「公立美術館の展覧会は学芸員による企画がほとんどで、市民であるアーティスト主導の企画展は全国的に見てもあまり例がない。実行委と地元作家のネットワークが強固にあったからこそ、実現できた展示です。我々学芸員も知らなかった作家や、知っていても今まで見たことのない作品に触れられる『前橋の美術』は、今後の美術館活動にも大いに役立つでしょう。企画展を契機に、何か新しい創作が前橋で生まれると良いですよね」と話す。

【作家、市民、美術館、画廊の繋がり感じて】

前回の「前橋の美術」では、世代もジャンルも異なる前橋ゆかりの作家による多彩な表現をまとめて見られる機会を初めて作った。今回は美術にとどまらず、地域と美術活動の関わりを広く知ってもらうため、「つながり」というテーマを設定。サブタイトル「トナリのビジュツ」には作家同士はもちろん、市民とアーティスト、学芸員、ギャラリストなど多様な繋がりを再認識してもらいたいという思いが込められている。
今展の参加作家は20~90代と幅広く、出品作品も絵画から彫刻、映像、インスタレーションまで多彩。参加作家の一人で県美術会会長の井田秋雄さん(84)は、「つながりをテーマにした企画展は、今のアートシーンを反映していて意欲的。作家としても県展運営に携わる身としても勉強になることが多く、大いに刺激を受けました」と語る。

【作品やパフォーマンスを街なかでも展開】

今回、街なかの各所に作品を展示するなどアーツ前橋を核に広く展開しているのも特徴の一つ。6作家がmap前橋市民ギャラリーなど7カ所でインスタレーションやパフォーマンスを発表。鈴木ストアで、かつてあった鈴木ストアギャラリーの記憶をテーマにした作品を展示する喜多村徹雄さん(43)は、「長く公設美術館を持たなかった前橋では、美術や文化活動の多くは街なかで展開されてきました。現在過去未来、商店街を巡りながら街と表現活動と地域の人々との関わりを想像してもらえたら」とほほ笑む。
今回は新たな試みとして展示に加え、参加作家による市内の中学校や福祉施設などへの支援活動「アートゆい」も実施。多くの団体や地域と連携しながら、企画展を創り上げてきた今井充俊実行委員長(62)は、「作家も街の人も、誰もが表現者。『つながり』には、お互いを認め合う社会にしたいという思いを込めました。『前橋の美術』は一見ローカルな展示に見えますが、今ある社会問題をアートを介し全国に投げかける活動でもあります。市民と新しいことに挑戦する美術館が前橋にあることを、地域の皆さんは誇りに思って欲しい。今回の企画展が、新たな『つながり』の始まりになれば」と力を込める。

12の画廊&美術館が「ワンチーム」で強力サポート

「前橋の美術」の見どころは多いが、中でも特筆すべきは市内12カ所の画廊や美術館で企画協力展が開催されている点。会期に合わせ、各会場では参加作家の作品を中心に、前橋に関わる展示を行っている。

ヤマトギャラリーのグループ展

ヤマト本社1階のヤマトギャラリーホールでは、11作家によるグループ展「前橋美術の環―自然との共鳴2020」を3月27日まで開催中。会場には絵画や立体、写真など多彩な作品が並ぶ。同社の町田豊社長は、「弊社は建設プロダクトの会社ですが、地域貢献の一環として地元の作家支援に力を入れています。今回、多くの作家さんに出品して頂き協力企画展を開催しました。作家さんやアーツ前橋、他の参加画廊さんと『ワンチーム』になって前橋の美術を盛り上げたいですね」と意気込む。
このほか、「井田秋雄個展」(16日まで、ノイエス朝日)、「アートセレクション展」(17日まで、ギャラリーオーツー)、「いぬとねこ展」(22日まで、ギャラリーアートスープ)、「前橋の版画」(24日まで、アートギャラリーミューズ)など、バラエティに富んだ作品展が楽しめる。ノイエス朝日の武藤貴代さんは、「色んな作家さんと知り合えて、交流の輪が広がりました。市内には多くの画廊があります。アーツ前橋を中心に周遊して頂き、美術をより身近に感じてもらえたら」と期待を寄せる。ほかに、画廊翠巒、ギャラリーあーとかん、ぎゃらりー君香堂、ぎゃらりーFROMまえばし、詩季画材ギャラリー、点Gallery、中之沢美術館が参加。

●「前橋の美術2020」3月15日まで。入場無料。会期中は毎週末、参加作家によるトークやイベントを開催。アーツ前橋(027-230-1144)※各画廊の展示や日時は個別に事前確認を

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