2019最終審査会 講評

粘り強く撮影した力作に今後も期待

最終審査をする審査員ら(=朝日新聞東京本社)
朝日ぐんまでの審査

昨年12月、朝日新聞東京本社(東京都中央区築地)などで行われた「朝日フォトコン2019」の最終審査。年間の入選作品220点と、第5回中学生高校生フォトコン応募作品の審査を行った。

審査員は和やかにあいさつを交わした後、会議室の机いっぱいに並べられた作品の審査に取り掛かった。全員が真剣な眼差しで作品一枚一枚を吟味する。選考が進んでくると、審査員から自然と短評が出てくる。「楽しそうな雰囲気が出でいます」、「毎月の応募は大変でしょうね」、「引き付けられますね」 笑みもこぼれ、穏やかなムードの審査会になった。

両フォトコン審査は約5時間にも及んだが、厳正な審査の結果、各賞が決定した。大賞など上位6賞の講評を紹介する。

大賞 朝日新聞社賞
「春の宵」
 神保 忠雄 さん 高崎市

新鮮な発見をした独自性ある写真

朝日新聞東京本社映像報道部長
大野 明

【選評】 毎月の応募作の中でも、この作品は夜景と梅の花、古墳にカップルという取り合わせがとても斬新でユニークです。撮影場所を、よく探し出したなと思いました。古墳の上に2人が座っていることで、画面にストーリー性が醸し出されます。「将来のことを話しているのかなあ」など、見ていると色々な想像が膨らみますね。模倣ではなく、自分ならではの新しいアングルや発見をきっちりと出しています。撮影者の方と話をしてみたいな、と思った1枚です。

 

見る人を引き付ける見事な表現
東京写真記者協会事務局長
渡辺 幹夫

【選評】 写真の表現を凄く考え、面白さを十分感じていらっしゃいますね。手前に梅と河津桜を入れてアングルを決め、向こう側のすっきりと夕景迫る街並みのムードある色合いを残しつつ、まとめている。赤いのぼりも良いですね。色々なものが映り込んで猥雑になるところを、動かない静的な表現を生かして見る人を引き付けている点を高く評価しました。

ネッツトヨタ高崎 社長賞
「子ども飛脚」
 千葉 直江さん 邑楽町

自然でユーモラスな表情にクスッ
ネッツトヨタ高崎常務取締役
青山 稔

【選評】 村の催しなのでしょうか、子どもたちの飛脚姿がバッチリ決まっています。太ももが印象的ですが、ふんどしを締める子はもとより今では半ズボン姿もなかなか見かけませんね。この6人それぞれのキャラクターがよく表れていて、画面の変化付けに大きな役割を果たしています。特に主演男優賞ともいえる手前の子の存在が、作品の面白さを際立たせています。この作品の真似をして同じように撮影しても、作り手の意図が見えてうまく行かないでしょう。子どもたちの楽しそうな表情が自然で、そういった意図を感じる前にクスッと笑ってしまいます。広角レンズで、低いアングルから撮影した構図もいいですね。寝そべる子どもの言葉が聞こえてきそうです。空の青さやタンポポの黄色、草木の緑もあって春らしさが出ています。絵としてもしっかりまとまった作品です。

福田健太郎 賞
「わ鉄の春」小島 良行 さん 桐生市

何もかも的確にまとめた春を思う作品
特別審査員 写真家
福田 健太郎

【選評】 フレーミングやバランスがとても良く、しっかりと作品を仕上げていて、力を発揮された作品だなと思います。日中の柔らかな光を生かし、ありのままの自然の色が出ています。桜や花桃など春爛漫の様子が一層響いてきました。大勢の人が来る有名なスポットかもしれませんが、作者は冷静にポジショニングや前景から中景、奥まで隙なく整えて、写るようにレンズにも気を遣っています。シャープなピントも、何もかも的確にまとめました。しみじみと春を思う作品に感じられたので、選ばせていただきました。

1973年、埼玉県生まれ。18歳の時に写真家を志す。風景写真の第一人者竹内敏信氏の助手を経てフリーランスとして活動開始。日本を主なフィールドに躍動する生命の姿を追い続けている。写真集「泉の森」など数々の著書を出版。日本写真家協会会員(JPS)

若子jet 賞
「僕の友達」金澤 満弘 さん 高崎市

ユーモアある素晴らしい撮影スタイル
特別審査員 写真家 
若子jet

【選評】 金澤さん、おめでとうございます。子どもや動物写真を撮るのは難しいですが、我が子のような親しみのある、緊張感のない笑顔を引き出しました。祭りの背景を上手く整理して、子どもの表情に目線が行くような迫力あるフレーミングがとても良いですね。タイトルも面白いです。また、丸い眼球には、撮影者が映りこんでいて、向き合っている様子が分かります。人に声を掛けて撮ることが難しい時代に、ユーモアのあるお人柄ならではの撮影スタイルを今後も続けてください。

岐阜県生まれ。名古屋造形大卒。出版社編集部を経て、写真家松本明彦氏に師事。絵画のように作り込まれた独自の世界観で人気を博す。写真集「キッチュa GO!!GO!!浪花♡編」など出版。トークショーや審査員としても活動。デジタルハリウッド大学講師

小原 玲 賞
「裂音」大塚 喜広 さん 高崎市

技術ある一枚 轟が聞こえてくるよう
特別審査員 写真家
小原 玲

【選評】 轟きわたる音が聞こえてくるような、迫力ある手筒火花。渦巻くような煙の形が、とても面白く撮れています。よく見かける被写体ではありますが、しっかり上手に撮れています。これだけきっちりしていれば合格点。応募者としては、お若いですので今後、まだまだ伸びて行く方ですね。独自性を発揮するのは誰しも難しいかもしれませんが、それを見つけるのが大切。今後、さらに個性的な表現に挑んで欲しいです。期待しています。

1961年生まれ。前橋高校在籍中に写真コンテストで全国グランプリを獲得。報道写真家として天安門事件や湾岸戦争などを取材。その後、動物写真家に転身。写真集「アザラシの赤ちゃん」「シマエナガちゃん」「ひなエナガちゃん」など多数出版

 

朝日新聞社 前橋総局長 賞
「峠の茶屋」矢野 文夫 さん 太田市

「一瞬の情景」見事に切り取った味わい深い一枚
朝日新聞社前橋総局長
熊谷 潤

【選評】 何といっても、屋根を覆う緑のコケと真っ赤に色付いた木々のコントラストが素晴らしい。まず、その美しさに惹きつけられました。目線を下げると、また違った風景が広がっているところも面白いですよね。人の動きが、画面に奥行とアクセントを与えています。光の当たり具合も綺麗。「どんな場所から撮ったのかな」「どんな人が訪れたのかな」と色んな想像を掻き立てられました。鮮やかな色合い、大胆な構図、隅々まで工夫されていて、一瞬の情景を見事に切り取っています。とにかく味わい深い一枚ですね。

入賞発表に寄せて
ネッツトヨタ高崎 代表取締役社長 横田 衛

「朝日フォトコン2019」に、多数のご応募を頂きありがとうございました。1998年のスタートから22年目となった今回も、皆さまのご支援のおかげで前年度を大きく上回るたくさんの作品を拝見しました。読者の皆さまからも、「毎月の作品発表が楽しみ」というお便りを多数いただいており大変うれしく思います。
壮大な大自然や花木の美しさ、お祭りやイベントのほか、日常生活の一場面など題材は無数にありますが、それを作品に仕上げる発想力と行動力、そしてベストのタイミングを待つ忍耐。一枚一枚に込められた多大な努力と思いには、頭が下がる思いです。
美しい景色や楽しい催しなどの作品を見ていると、つい自分もそこへ行ってみたくなります。初めて通る道でも安心して運転していただけるよう、自動車の安全技術や性能は日々進歩しています。皆さまに、快適なカーライフをお楽しみいただくのが当社の願いです。そのためにスタッフ一同は心を尽くし、日々努力と研鑽を続けております。今後ともネッツトヨタ高崎と朝日フォトコンを宜しくお願い致します

 

新井豊さん
10点で年間最多入選賞受賞

新井豊さんの2019年10月入選作「森の妖精たち」

「朝日フォトコン2019」年間最多入選賞は、10点が入選した新井豊さん(前橋市)に決まった。新井さんは今回「濃霧晴れる」で風景・花部門賞を同時受賞。

2位以下は、9点入賞の田島正義さん(伊勢崎市)、8点入賞の舘野邦子さん(藤岡市)、6点入賞の石田卓治さん(太田市)、大塚喜広さん(高崎市)、5点入賞の荻原伸一さん(伊勢崎市)、狩野房雄さん(前橋市)、北村奉正さん(高崎市)、小坂明さん(前橋市)、小島良行さん(桐生市)、小山亜泉さん(高崎市)、しめぎ光男さん(みなかみ町)、関口徹さん(太田市)、富山エイ子さん(前橋市)、矢野文夫さん(太田市)と続いた。

朝日フォトコン2019
年間入選点数(敬称略)

 新井 豊 10点
 田島 正義 9点
 舘野 邦子 8点
 石田 卓治 6点
 大塚 喜広 6点
6 荻原 伸一 5点
6 狩野 房雄 5点
6 北村 奉正 5点
6 小坂 明 5点
6 小島 良行 5点
6 小山 亜泉 5点
6 しめぎ 光男 5点
6 関口 徹  5点
 富山 エイ子 5点
 矢野 文夫 5点

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