繭や生糸の保管庫 養蚕最盛期を象徴
甘楽町歴史民俗資料館の建物は、この地域の養蚕業が最も盛んであった1926年1月25日に甘楽社小幡組製糸工場の倉庫として、農家が生産した繭や生糸を保管するため建設されました。甘楽社小幡組とは、明治維新以降、生糸の輸出が増大するにつれて品質の統一と向上が要求された中で、収益の増大を図るために設立された組合制による揚返し工場です。近代資料として貴重なレンガ造り2階建てで、延べ床面積は289平方㍍。建設当時のモダニズムを表している赤レンガや入口横に佇んでいる「かかあ天下像」など、内観だけでなく外観にも見どころがたくさんあります。
その後、農業会、農業協同組合に引き継がれ、穀物や肥料などの倉庫として使用されていましたが、84年に町が買い受け、翌年に文化庁の指導によって歴史民俗資料館としてオープンしました。
1階は、富岡製糸場絵馬(町指定重要文化財)や座繰り機、蚕繭など養蚕・製糸・織物に関する道具や資料333点。2階は、室町時代後半にこの地を支配していた小幡氏の紋付赤備具足(町指定重文)をはじめ、織田信雄自筆の書状(同)、79年に町内の小幡八幡宮で発見された3体の円空の木彫仏像など約170点を展示しています。
レンガを積み重ねた重厚な壁や瓦屋根の建物は、養蚕最盛期であった当時の象徴としてその姿を良くとどめており、町の重要文化財に指定されています。また、「近代化産業遺産」(経済産業省)、県知事が「たからもの」として登録した絹の遺産「ぐんま絹遺産」にも登録されました。
さらに、この建物は、展示している資料や近くの「甘楽社小幡組由来碑」(JA甘楽富岡甘楽支所内)とともに、日本遺産「かかあ天下‐ぐんまの絹物語‐」の構成文化財としても認定されています。同碑には「邑ニ養蚕セザルノ家ナク製絲セザルノ婦ナシ(村に養蚕をしていない家は無く、製糸をしていない女性はいない)」と刻まれています。ここからも、この地域では絹産業が非常に盛んだったこと、また、地元の女性たちが活躍し、絹産業を支えていたことがうかがえます。
■きてみて■
甘楽町歴史民俗資料館/甘楽町大字小幡852-1/0274-74-5957/月曜(祝日の場合は翌日)、年末年始(12月29日~1月3日)休館/午前9時~午後4時30分/入館料高校生以上200円、中学生以下無料