悲願達成に1700人の観客が湧いた
Bリーグ誕生から5年。群馬クレインサンダーズがB1昇格を決めた。5月16日のセミファイナル(準決勝)第2戦目は、1725人もの観客がヤマト市民体育館前橋で、本県初のトップリーグのプロチーム誕生を見届けた。3度目のプレーオフ挑戦でようやくつかんだ昇格という夢。ここでは、B1昇格を決めた16日のセミファイナル第2戦を中心にレポートする。 (星野志保)
勝利のカギはリバウンド
「自分たちがどれだけ強いか、どれだけ力があるのかを証明するいいチャンスだ」(平岡富士貴ヘッドコーチ、以下HC)と臨んだプレーオフ。
セミファイナルの対戦相手は、アイザック・バッツ、クレイグ・ブラッキンズの2人の強力なインサイドの選手を擁する越谷アルファーズ(埼玉)。特にバッツはゴール下で力を発揮。いったんゴール下でボールをもらうと、サンダーズのビッグマンたちが体を寄せて激しく守っても、バッツのシュートを防ぐことは難しい。レギュラーシーズンの越谷戦では、毎回、バッツへの対策を講じてきた。
15日の第1戦目は、第4Qに一時17点まで点差を広げられる苦しい展開だったが、サンダーズの厳しいディフェンスが徐々に越谷の選手を疲れさせ、試合終了残り2分を切ったところで、野﨑零也の3Pシュートで逆転に成功。94―90で接戦をものにして、2戦先勝方式のプレーオフで、B1昇格に王手をかけた。
16日の第2戦目は、前日に越谷の長谷川智也に気持ちよくシュートを決められ勢いに乗せてしまったことや、警戒していたチャールズ・ヒンクルの左からのシュートを防ぎきれず終盤に点を積み重ねられた課題に対し、守備で自分のマークマンを交換して簡単に3Pシュートを決められないように平岡HCは指示を出した。
さらにバッツに対しては、彼にパスを供給される前に、リングに向かって走る選手を警戒することや、全員でペイント内を守ることを徹底させた。そして試合前に、「リバウンド(※)をしっかり取れば勝負できる」と平岡HCは選手たちをコートに送り出した。
※【リバウンド】シュートが外れて落ちてきたボールを取ること。攻撃側が取ることをオフェンスリバウンド、守備側が取ることをディフェンスリバウドという。
試合巧者ぶりを発揮 越谷の強みを消す
序盤は、プレッシャーからフリースローを落とす場面も見られたが、笠井康平の2Pシュートが決まったのをきっかけにチームは徐々に落ち着きを取り戻し、第1Qを19―10で終えた。
第2Qは、田原隆徳と野﨑の速攻や、ジャスティン・キーナンの3Pシュートなどで試合の流れをつかみ、昨日、24得点を挙げているバッツを0得点に抑え込んだ。残り約3分のところでバッツに連続得点を許したものの、終了のブザーと共に笠井が3Pシュートを決め、36―29で前半を終えた。
第3Qは、サンダーズの代名詞であるトランジションバスケット(速い展開のバスケット)の要である、トレイ・ジョーンズ(元アメリカ代表候補)の得点力が爆発。この第3Qだけで16得点を挙げる活躍を見せた。
守備では、越谷の畠山俊樹、長谷川に3Pを決められたが、バッツ、ブラッキンズ、ヒンクルの外国籍選手には得点を許さなかった。さらに、昨日負けていたセカンドチャンスにつながるオフェンスリバウンドも1本も取らせなかった。
61―50で迎えた第4Q。サンダーズが得意の走るバスケットで点を重ね、70―51と点差を広げた。一方、越谷も粘りを見せ、中盤の連続得点で点差を詰めたが、残り2分を切ったところで足が止まり、ファウルゲームで得点機会を狙ったものの、すでに巻き返す力は残っていなかった。試合は、83―71でサンダーズが逃げ切り、B1昇格を決めた。
全員出場で つかんだ夢
試合後の会見で平岡HCは、「まずB1昇格にホッとしています」と語り、「今日は何が何でも勝ちたかった。あとは全員出して勝ちたかった」と、昨日、出場できなかった選手への思いも口にした。
24得点の活躍だったジョーンズは、「ゲームの入りからとてもハードにアグレッシブにプレーすることで流れをつかみ、それを40分間続けることができた結果」と、目標達成に満足した表情を浮かべた。
この試合でMVPに選ばれた笠井も「昨日は、なかなか走れない時間帯があり、リバウンドを取り切れていないのに走ってしまう場面もあった。今日は、みんなでリバウンドを頑張って取る。リバウンドを取ってから走るというように修正できた」と笑顔で勝因を語った。
22日からは、もう一つの目標であるB2優勝をかけたファイナルに臨む。平岡HCは、「あと2試合、死に物狂いで勝ち取りたい」と、同じくB1昇格を決め、かつて自身が指揮を執っていた茨城ロボッツと、B2の覇権をかけて戦う。