シャッター街救済プロジェクトはじまる(Vol.2)

ILOVEラスベガスタイトル画像
前橋出身の美術作家SUSH MACHIDA(すしゅ・まちだ)さんがラスベガスでの暮らしを紹介。
筆者が描いたラスベガス市内にある色鮮やかな巨大壁画「ラスベガスFish’n’Chips」

長い間ラスベガスのダウンタウンは、「過疎化」「商業の衰退化」という問題を抱えていました。代わって増えたのが、昼間から路上で寝転ぶ覚せい剤中毒者、銃声、ゴミ、そして潰れて放置された店舗群。正直、怖かったです。

そんな数年前の或る日、珍しく電話のベルが。「お願いがあるのだけど、ビルの外壁に絵を描いて頂けないかな?」

聞けば、 そんな荒廃地に芸術を散りばめ、そこを舞台に野外音楽フェスティバルを開催するという…。そういった 「ストリートアート」は、21世紀に入って興った大きな芸術ムーブメント。さびれた街を活性化させるための有効なツールとして、全米の主要都市で利用、展開されています。

芸術、つまり美を供給する事により、エリア全体の文化レベルが向上し、シャッター街に再び人々が戻る。そういった算段なのでしょう。

こうして数年をかけて、世界中から招聘された著名作家による数十点の作品が「収集」され、街の壁を鮮やかに彩り始めました。壁画だけを観るために訪れる観光客も多いです。

僕ももちろん、3階建てのビルの壁をクレーン車に乗りつつ、高所恐怖症で震える足を抑えつつ、ラスベガスに、巨大な魚の絵を描きました。

そして現在のダウンタウン。数年前、あれだけ荒廃していたとは信じられないほど、お洒落なカフェ、レストランが増えて、超人気スポットへと変貌を遂げたのです。

音楽フェスティバルは十万人を呼ぶ大きなプロジェクトに成長し、私の描いた壁画の前でグラミー賞が撮影されるなど、何かと話題を呼ぶ存在になりました。

文化も経済も、もしかすると、芸術に始まるのかもしれないですね。

SUSH MACHIDA (すしゅ・まちだ)

SUSH MACHIDA (すしゅ・まちだ)

【プロフィール】
前橋生まれ。県内の高校を卒業後、92年渡米。アメリカンフォトインスティテュート(ニューヨーク大)選出。ネバダ州立大学ラスベガス校修士課程修了。Otis美術大客員教授を経て、現在、美術作家として活動中。ラスベガス在住。インスタグラム@sushmachida

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