デビュー30年、前進あるのみ
世界遺産は最大のブランド。これを追い風に『群馬熱』を一層、高めていきたい
【群馬と強い縁を感じる】
「遂に来るべき日がきました。世界遺産登録決定。皆さん、この勢いに乗って群馬全体を盛り上げていきましょう」 先月30日、富岡青年会議所創立50周年記念講演会に登場。紺のスーツにダルマ柄のネクタイといった出で立ちで、群馬愛あふれるトークを繰り広げた。08年にぐんま大使就任以来、郷里の魅力を積極的にアピール。自身のフェイスブックトップ画面には富岡製糸場の写真をアップしている。「富岡製糸場と絹産業遺産群」が登録勧告された4月26日、下仁田で行われていたイベントに参加していた。その翌日27日には司会を務める情報番組「シューイチ」で製糸場をいち早く取り上げた。トーク番組「ウチくる!?」でも観光客でごった返す「世界の宝」を紹介。「歴史的瞬間の日、たまたま地元に居合わせた。やはり、群馬とは強い縁を感じますね」
【少林山のダルマを持って上京】
世界遺産構成遺産の一つ、高山社跡がある藤岡に生まれる。5歳の時、フィンガー5を見て熱狂。小学1年の文集に「歌手になりたい」とつづり、サインのために書道を習い、芸能人大会で恥をかかないよう野球を始める。芝居や器械体操なども全て芸能界に入るためにやった。
15歳の春、高崎の少林山で買った小さなダルマを持って上京。あちこちのオーディションに応募し現在のプロダクションに採用された。が、歌も芝居もダメ。「藁にもすがる思い」で85年にお笑いコンビABブラザーズを結成、バラエティー番組「いただきます」のアシスタントとしてメジャーデビューを果たす。「ネタを書いたことは1度もなかったが、やらなきゃ即クビ。でも、もうダメだという時に手を差し伸べてくれる人がいる。捨てる神あれば拾う神あり。来る仕事、来る仕事を精一杯ただがむしゃらにやっていましたね」 その年、テレビドラマの主役に抜擢。さらに、「オールナイトニッポン」で史上最年少パーソナリティーを務めるなど一気にブレイク。90年以降は単独での仕事を始め、ドラマや舞台など活躍の場を広げていった。
【飾らない人柄と絶妙なトーク】
その後、お笑い、司会、俳優、歌、ダンス、何でもこなせるマルチタレントとして確固とした地位を確立。現在、レギュラー番組を多数抱える。情報番組では共演者への的確なコメント振りと軽妙なトークでテンポよく場を仕切っていく。トーク番組では飾らない人柄と巧みな話術でゲストの本音や素顔を引き出す。アドリブ力と安定感は抜群だ。「現場によって求められる役割は違う。情報番組ではフラットな視点と自分なりの意見が必要。トーク番組ではゲストの魅力やエピソードをどれだけ掘り起こせるかが勝負。どう転んでも大丈夫なように準備しています」
若い時のように“150キロのストレート”は投げられないが、“変化球”を自在に繰り出し常に自分史上最高のパフォーマンスを提供することを心掛ける。「今を一番素晴らしいものにしないと過去に失礼」だからだ。大上段に構えたり存在感を誇示することはしない。その場にいる人や見ている人が笑顔になるような雰囲気作りに心を砕く。「僕のウリはプロレスで例えるなら60分フルラウンドで戦えるところ。1発15分で決めることはしない。時間一杯、様々な技を繰り出し楽しませるのが本当のプロだと思っていますから」
【現状に甘んじない】
明るく陽気なキャラもお茶の間の人気も健在。が、現状に甘んじることはない。ステージが上がるごとに求められる能力も格段に高くなっていく。絶えず自らをブラッシュアップしていかなければ生き残れない世界。輝き続けるにはどうしたら良いかを常に考え行動する。「どんな環境に身を置くか、誰と付き合うか、何を選択するか、それを自らがどう受け止めどう反映していくか。机上で出来ることは少なく、やはり『日常』で努力し続けるしかない」
タレントとして夫として父として、多面的な顔を見せる。ぐんま大使としても奮闘中だ。最新の県観光ポスターでは、製糸場屏風の 前に着物姿で鎮座。「こんどは群馬であいましょう」のコピーと共に誘客に一役買う。「身近なものが世界的に評価されて本当にうれしい。世界遺産は最大のブランド。これを追い風に『群馬熱』を一層、高めていきたい」
【迎合せずに我が道を行く】
今年でデビュー30年目。芸能界は正解がなく、「まさか」の連続だ。「自分では大成功と思っていても評価されなかったり、逆に落ち込んでいたら絶賛されたり。だから、『聞く耳は持つけれど鵜呑みにせず、批判は受けるが迎合せずに我が道を行く』というスタンスでやっています」
小学校時代から「芸能界一直線」。熱い思いは今も変わらない。スケジュールはぎっしりだが、まだまだ叶えたい夢がある。「歌あり、芝居あり、トークありのエンターテインメント番組に出演と制作の両方で関わること。いくつになっても前例のないことに挑戦したい。常に前進あるのみです」 マルチタレントとして、ぐんま大使として、ヒデちゃんはこれからも「七転び八起き」の精神で我が道を行く。
文/中島美江子
写真/宮下 淳