東京に住む両親は、年を重ねても整然とした生活を送っていると思い込んでいた。部屋には花を活けたり、お正月には手作りのおせち料理が並び、宿泊の際は洗い立てのシーツを用意してくれた。
ところが先日実家に帰った際、夕飯の煮物に異変を感じた。「これ、変な味がする」と吐き出したら、「そう?大丈夫よ。嫌だったらやめとけば」と2人とも平然と食べている。群馬では、会社近くの総菜店などでO157が猛威を振い、死者が出たというのに。手料理はいいが腐ったものは論外だ。
誰も具合が悪くなった訳ではないが、80歳を過ぎた両親の生活の質や体力を補うサポートをしなければと日を置かずに再訪。まずは消毒用アルコールを購入し、食料などを取り出し念入りに拭いた。次は床下収納庫。中には7年前の醤油やみりんもあった。食品庫も同様。賞味期限切れの小麦粉やそうめんであふれかえっていた。食品はゴミ袋へ、得体の知れない液体はシンクへ。まだ、足腰の達者な母親がサッサカ分別してくれたので作業は2時間ほどで完了。以前に比べ格段に衛生的で気持ちがスッキリした。
キッチンの片付けは、食中毒に対する不安を軽減した以上に、作業中のたわいもない話から両親が今、本当に困っていることが透けて見えてきた。来てよかった。次の来訪時には、不要なモノで詰まった納戸掃除に親と一緒に取り組む予定だ。
(谷 桂)