草木染の世界で春を楽しんで
当園では、古くから染色に使われてきた植物を紹介しており、園内の染色工芸館では日本の伝統の色彩を草木染で再現した布や、着物などの染織品を展示しています。草木染とは、植物の葉や枝、樹皮、根などを煮出して色素を抽出した染液や、虫や貝などから色素を抽出した天然の染料を使って布や糸を染めるものです。アイ、アカネ、ムラサキ、ベニバナといった植物は、飛鳥・奈良時代から染料として使われてきました。
開催中の収蔵品展「草木染の美・春」では、季節を感じられるような染織品を紹介しています。鮮やかな緑の地色に桜の花が描かれた小袖裂(こそでぎれ)は江戸時代末の着物の一部分です。型染で模様を染め抜いた上に刺繍がほどこされた華やかな柄で、檜扇(ひおうぎ)や冠といった、「源氏物語」のような王朝文学の一場面を連想させるモチーフが描かれています。このような意匠は「御所解(ごしょどき)模様」といい、武家や公家の教養ある女性たちに好まれました。
写真の着物「清明(せいめい)」は、伊勢崎市在住で、植物から糸を染め織り上げるまでを手がける染織家・芝崎重一さんの作品です。昔ながらの座繰り引きによる糸をエンジュとロッグウッドで染め、織り上げたものです。「清明」とは二十四節気のひとつで、太陽暦の4月5日頃にあたります。
園内は様々な花の季節となりました。4月には、ヤマザクラのピンクと新緑の芽吹きで淡く染まる山の景色が広がります。ぜひ、散策とともに草木染の世界でも春を楽しんでいただきたいと思います。