幼児から高校生まで 今、読んでほしい書籍&絵本8選
緊急事態宣言が延長され、外出を自粛する日々が続いています。せっかくの長期休業期間ですから、ゆっくり読書に親しんでみてはいかがでしょうか。4月23日~5月12日は「こどもの読書週間」。こどもの日を含む3週間に行う春の行事で、秋の読書週間と同様、公益社団法人読書推進運動協議会が主催しています。今週は、県内でこだわりの絵本や書籍、小冊子などを扱う4人の「本選びのプロ」に、幼児から高校生までそれぞれの年代に「今こそ、読んで欲しい」本を2冊ずつ紹介していただきました。
未就学児へ 絵と文、家族みんなで楽しんで
時をつむぐ会 代表理事 続木 美和子
約1万冊の中から子どもの年齢に合った本の紹介やアドバイスも行う、 県内唯一の子どもの本専門店「本の家」(高崎)を運営しています。
私が紹介する1冊目は、0~3歳におすすめの「ととけっこう よが あけた」です。元気なニワトリが「♪ととけっこう よがあけた まめでっぽう おきてきな…」とわらべうたを歌いながら、色々な動物の子どもを起こしていき、最後に人間の赤ちゃんを起こしておひさまに挨拶するという物語。楽譜も付いているので、くり返し、歌うように読んでみましょう!大人も赤ちゃんも気持ちの良い1日を送ることが出来ます。
2冊目は、4~6歳のお子さま向けの「金のがちょうのほん」です。「金のがちょう」「三びきのくま」「三びきのこぶた」「おやゆびトム」といったおなじみの4つの昔話を、イギリスのレズリーさんの絵と文章でお届けします。格調高い絵と瀬田さん、松瀬さんの訳は家族みんなで楽しめます。絵をじっくりと見ていると、ストーリー以外の物語が絵の中に隠れているのがわかってきますよ。
小学生へ 小さきもの、大切なもの、忘れずに
書店「フリッツ・アートセンター」代表 小見 純一
スタッフと一緒に一つひとつ丁寧に、大切にセレクトした書籍や絵本、古書、CDなどを置いています。今回、小学生の皆さんには書店にある約1万点の中から、「とっておきの2冊」を紹介します。どちらにも詩と絵があり、互いに響き合い豊かな物語を創り出しています。
低学年にオススメなのは、「つたえたい美しい日本の詩(こころ)シリーズ 工藤直子詩集 てれるぜ」。工藤さんの生命力に満ちた力強い詩と、いもとさんの心温まる柔らかな絵の世界が一つになった詩絵本です。そこには、見過ごしてしまいそうな小さきものへの愛情と好奇心があふれています。生きとし生ける全てのものに「詩情」があることを教えてくれる、かけがえのない一冊。
高学年には、「最初の質問」を推薦します。「今日、あなたは空を見上げましたか」「『うつくしい』と、あなたがためらわずに言えるものは何ですか」 本を開くと、数々の言葉が静かに語りかけてきます。それらの質問は忘れてはいけないこと、見過ごしてはいけない大切なことを気付かせてくれるでしょう。ごくわずかな言葉と絵で出来ているからこそ、想像力を大いにかきたててくれます。ページをめくるごとに、温かい気持ちになりますよ。作者と言葉のキャッチボールをしながら是非、自分だけの詩を完成させて下さい。
中学生へ すーっと広げてくれる「読書の世界」
古本業「suiran」 主宰 土屋 裕一
様々な業種の店舗や個人から「空間に似合う本をセレクトしてほしい」などの依頼を受け古本の選書を行っています。
本にまつわる仕事を始めて10年。日本の文豪は数知れず、名作を読みたくても、誰の何から手をつけたらいいのかわからないことがあります。そんな時、群ようこ著「鞄に本だけつめこんで」(新潮社)が道しるべになってくれるでしょう。梶井基次郎、川端康成、谷崎潤一郎らによる名作24冊を紹介するエッセイ風ブックガイド。名作の抜粋とシンクロするように語られる群ようこさん自身のエピソードが、笑いや関心を誘い、文学作品への入り口を開いてくれるのです。
もう1冊は、絵本を紹介します。当然ですが、絵本は子どもだけのものではありません。中学生も大人も読んで構わないのです。「ルリユールおじさん」は、女の子が大切していた傷んだ本を、製本を生業とするおじさんが修復する物語。いせひでこさんの水彩画が美しく、子ども時代の高揚感をよみがえらせる魔力があり、絵本特有の魅力を存分に味わえます。この2冊は、読書の世界をすーっと広げてくれるでしょう。
高校生へ 「作る楽しさ」「異なる視点」味わって
書店「REBEL BOOKS」店主 荻原 貴男
当店では、店主がよいと思う本を選んで置いています。その中から、あまり外出できない高校生のために、自分で手を動かして「つくる」楽しさを伝える本と、広い世界の異なる視点を味わう本の2冊を紹介します。
1冊目は、「野中モモの『ZINE』小さなわたしのメディアを作る」です。個人が出版社を通さずに、自由に作る冊子のことをZINEといいます。著者の野中モモさんはライター兼翻訳家で、日本でZINEカルチャーを伝える活動もしています。ZINEはお金がなくても技術がなくても、作りたい気持ちがあれば誰でも作れます。誰に言われた訳でもなく作りたいものを作って人に届けること、自分自身がメディアとなることの楽しさを教えてくれる本。
もう1冊は、「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」。イギリスに住む著者の息子さんがカトリックの名門小学校から進学したのは、イギリス社会が抱える経済的な格差や人種差別などがそのまま反映されたかのような中学校。日本の学校では考えられないような多くの問題を抱えた環境の中で、子ども自身が自分で考えて状況に向き合い、前に進んでいく姿には、考えさせられるし、教えられるし、何より読んでいて最高におもしろい本です。