コロナ時代、非接触型販売で新たな活路を
県内各地に続々
コロナ時代のいま、飲み物やアイスを購入するだけではなく、人との接触を避けて買い物をしたい、自宅でおいしいものを食べたいなどのニーズを受け、多彩な自販機が県内に続々と登場している。時短要請により苦境に立たされた飲食店や食品メーカーなどが活路を求め知恵を絞る中、自販機は新たな役割を担っている。今週はラーメン、餃子、うどん、パン、洋菓子、せんべい、カレー、ドレッシング、民芸品など、県内の様々な自販機を紹介する。
自販機メーカー、フル稼働で生産
県内の自販機事情に詳しい駐車場管理会社「駐車場をさがせ」(高崎市)の船越谷尚彦社長は、「飲料自販機が頭打ちで、空きスペースに食品自販機を設置するケースが増加。コロナ下での非対面のニーズに加え、買物弱者対策の観点からも、自販機に注目が集まっている」と話す。一方、今年1月に冷凍自販機を発売したサンデン・リテールシステム(東京)の関東・信越支社(前橋)櫻井健明主任によると、5月ごろから発注が大幅に増加し現在は工場をフル稼働させているという。「県内では食品製造会社やメーカー直売所などが設置するケースが目立ちます。7月には冷凍、冷蔵の切り替え可能な自販機も開発したので、今後は多業種でのビジネス拡大に貢献できれば」と意気込む。
手軽さ人気、キャンプのお供に
上野村 エムラボ
設置場所:多野郡上野村大字勝山696-3の同社事務所内
上野村の地域活性化に取り組むエムラボ(三枝孝裕社長)は今年7月に、村の特産物を使用したレトルトパック食品の自販機を宿泊施設「ヴィラせせらぎ」前の同社事務所内に設置した。村内には早朝や夜間に営業する店がほとんどなく、利便性が良いと村民から好評だ。首都圏からキャンプに訪れる観光客の利用も増えているという。購入できるのは、上野産キノコがたっぷり入った「きのこカレー」(600円)、特産イノブタ入り「キーマカレー」(同)、「まいたけおこわ」(同)、「もつ煮」(700円)、「おかゆ」(410円)、「しいたけおかゆ」(450円)の6品。常温のため電子レンジや湯せん調理が必要。三枝社長は「スタッフと追求したこだわりの味を気軽に味わってほしい。今後は県外にも設置したい」と意欲を見せる。同社高崎事務所(027-384-3927)。
麺ー1グランプリ優勝の味
板倉町 うどんcafeはらだ(原田製麺)
設置場所:板倉町板倉1640の同店
板倉町板倉の原田製麺は大正5年創業の老舗製麺店。4代目の原田一平さんは、ご当地麺料理ナンバーワンを決めるグルメイベント「麺―1グランプリ」の第1回(2011年)と第2回に「板倉きゅうりの冷汁(ひやしる)うどん」で出場し優勝。しかし、同社は製麺店だったため、料理をコンスタントに食べられる場がなかった。ファンのニーズに応え昼のみ営業する「うどんcafeはらだ」を新設し、同メニューを提供してきた。自販機でいつでも買えるようにできたらと考えていたところコロナ禍に。客足の減少を食い止めたいと、自販機での販売を決断した。ゆでた自家製麺とオリジナルのつけ汁を合わせ、付属のキュウリもみを添えてカップで食べる(500円)。同製麺(0276-82-0063)。
シェフの味、ドライブスルーで
前橋市 ピッツェリア・ペスカ
設置場所:前橋市六供町1030の同店店舗前に2機、上佐鳥町500-5のファクトリーほか、高崎市シンフォニーパーキング、居酒屋「集い屋」(前橋市中央通り)、ベイシア前橋西部モール店、同前橋みなみモール店、同前橋小島田店、同本庄早稲田ゲート店(埼玉)
前橋のイタリアンレストラン「ピッツェリア・ペスカ!」の駐車場には、特製生ドレッシング(500円)と辛口万能オイル(600円)を販売する自販機が登場。同店を経営するHAWORDの宮﨑雄一社長は「コロナをきっかけにドレッシングにシフトした」と、以前から同店で人気のあった商品を自社のドレッシングファクトリーで生産し、冷蔵自販機でいつでも購入できるようにした。店舗前の1号機には「ドライブスルー方式」の自販機を採用。早朝、深夜問わず購入する人が絶えないという。宮﨑社長は「ニンジンとタマネギをふんだんに使用。シェフが作った味が家庭で楽しめ、ちょっと贅沢な気分になりますよ。サラダ以外にも活用できます」と話す。同ファクトリー(027-212-8401)。
手土産も自動販売機で
老舗のパン45種類
伊勢崎市 シミズベーカリー
設置場所:伊勢崎市太田町928
伊勢崎市太田町の老舗パン店シミズベーカリーでは、2年程から自販機を設置していたが、コロナ禍に対応するため2020年に2台増設、計3台を稼働させている。人気商品の「キャベツフィーリング」や「スライスドーナツ」「チョコツイスト」に加え、丸いパンの間にクリームをはさんだ流行の「マリトッツォ」など、45種類のパンがずらりと並ぶ。近所から買いに来たという田中容子さん(61)は「定番から人気商品まで、色んな種類があるので選ぶのが楽しい。好きな時間に好きなパンを対面せず買えるのところも良いですね」と笑顔で語る。同店の清水百合子さん(52)は「お洒落ではありませんが、昔ながらの懐かしい素朴な味になっています。季節限定の商品や新商品も並びますので是非、ご利用下さい」と話す。同店( 0270-26-0535)。
全種類のせんべいを非接触で
前橋市 清香園
設置場所:前橋市本町2丁目8-12の「清香園」店舗前
前橋に4月オープンしたせんべいや「清香園」。コロナによって、「非接触で安心して商品を届けたいという思いから、自販機を同店の前に設置した。緊急事態宣言期間中は店舗を休業しているが、あられ、おかき、おせんべいを全種類、店内商品と同じ金額で購入できる。サクサクとした食感の小粒あられ「サザレ」(280円)、正統派の醤油せんべい「チュウマル」(300円)、軽い食感のえびマヨネーズあられ「ウスザクラ」(同)、少し甘塩っぽい「ハツユキ」(350円)など。代表の三橋一仁さんは「近所の方や営業時間に合わず立ち寄れない方の利用が多い」と話す。箱詰めや包装など贈答用のサービスは受けられないが、24時間いつでも購入できる。同店(027-221-5683、インスタグラム=@seikaen1875)
自家製パンやラスクなど
前橋市 シャトア
設置場所:前橋市千代田町2-7-14 の同店
前橋まちなかの人気パン工房シャトアでは、今年1月から常温でパンを販売できる、コインロッカースタイルの自販機を導入した。14商品を収納するロッカーの前面は透明で中身が見えるので、購入したい商品の投入口から硬貨を入れると扉が開錠する仕組み。五十嵐明子代表は以前から自販機に興味があったが、コロナ下で非対面式販売の必要性を感じ、小規模事業者持続化補助金を活用しての導入に踏み切った。お買い得セットやくるみパン(1斤)、ぐんまちゃんラスクなど、すべて500円(変わることもあり)で、24時間購入可能。こまめにアルコール消毒を行うなど自販機に対する感染防止策も徹底。同店(027-257-0014)。
ケーキ屋さんのお菓子
太田市 プルミエ
設置場所:太田市鳥山下町395-1のスイーツカフェ「プルミエ」敷地内
太田市の洋菓子店「プルミエ」では、贈答用の菓子詰め合わせやバウムクーヘンなどの焼き菓子に加え、プリンや生チョコタルトなどの冷たい洋生菓子などを自販機で販売している。営業時間外にも洋菓子を買ってもらいたいとコロナ前から導入を決めていたが、設置直前にコロナが感染拡大した。今では営業時間内でも、人との接触を避けたいと、あえて自販機でケーキを購入していく姿もみられるという。焼き菓子の詰め合わせは贈答用の包装が施してあり紙袋付き(1000円)なので、手土産としても利用できる=写真。生ケーキは5個入りで1500円。同店(0276-32-6090)。
民芸品や市産スイーツ
太田市 OTA CITY MARKET 実行委員会
設置場所:太田市東本町16-1の東武太田駅構内、太田市浜町2-35の太田市役所1階
東武太田駅と太田市役所1階のそれぞれに、市産品を購入できる自販機が昨年10月から設置された。同市の事業「おおたシティプロモーション」の一環で、県内各地選りすぐりの店舗が集まる販売イベントを開催するなど、地域活性に取り組んでいる民間団体「OTA CITY MARKET」実行委員会(金子優美実行委員長)が自販機を運営している。昨年から思うようにイベントが開けなくなってしまった同団体が、非対面方式で販売を行うことにより、市の魅力を広めようと同事業に参加した。
太田駅では、だるまやコーヒー(ドリップバッグ)など市内で企画・生産された物産品を取り扱う。市内外から仕事や観光で訪れた人が土産として利用できるようなラインナップだ。一方、太田市役所では、市内の和・洋菓子店らによる大福やケーキなどのスイーツを販売。緊急事態宣言などにより移動を制限される中、様々な店の菓子が一カ所で買えることから市民らに好評だという。同市観光交流課(0276-47-1833)。
種類豊富なラーメン・餃子
地産地消、キャッシュレスで
前橋市 餃子工房RON
設置場所:前橋市野中町401-3の同店
ギョーザやシューマイ、春巻など中華総菜の製造販売を手掛ける、前橋のみまつ食品は今年3月、直営店「餃子工房RON」に自販機を設置した。同社によると、「他者との接触や現金などの受け渡しを極力減らしたい」など店舗利用者からのニーズに応えようと、サンデン・リテールシステム(東京)の協力を得て、大型の冷凍食品を扱える新機種「ど冷(ひ)えもん」を導入。キャッシュレス決済も搭載している。さらに地元企業の厚意で、ウイルス等に不活化効果のある光触媒で自販機全体をコーティング。光が当たるたびに繰り返し除菌をする効果があるという。
ラインナップは、県産麦豚と国産野菜を使用したむぎぶた餃子(20個)、野菜餃子(20個)、上州麦豚焼売(8個)、上州麦豚棒餃子(5個)、上州麦豚春巻(5個)で、いずれも税込600円。同店(027-290-2550)。
景勝軒の味そのままを家庭で
高崎市 博多十一番街
設置場所:高崎市上小塙町114-4の同店
今年4月、高崎市上小塙町の環状線沿いにオープンしたラーメン店「博多十一番街」は、景勝軒(伊勢崎)グループ。5月から景勝軒特製の「上州焼き餃子」(650円)や人気メニュー「ふじ麺」(800円)などが24時間買える冷凍自販機を稼働している。コロナ下で、非対面販売やテイクアウトの需要が増えていることから導入。営業時間外の購入を想定していたが、意外にも昼間の購入者が多いという。「哲二郎らーめん」(800円)、「哲二郎まぜそば」(同)のほか、「鷹の目直伝オーション焼きそば」(500円、11日まで販売)など。同社の高柳裕一さんは「好調なため、前橋、高崎、伊勢崎の店舗でも置いたり、商品数を増やしていく予定。定期的に商品ラインナップを変更するなどお客様に飽きられない工夫もしていきます」と意気込む。同店(027-386-3362)。
地元産ニラ餃子や自販機限定麺
伊勢崎市 麺や蔵人
設置場所:伊勢崎市太田町147-3の同店店頭、高崎市吉井町片山448-1のJAファーマーズ高崎吉井店
伊勢崎でオープン13年目を迎えたラーメン店「麺や蔵人(くろうど)」では今年3月、店頭に自販機を設置。同店は全国屈指のニラ産地・伊勢崎を盛り上げようと4年前、オリジナルメニュー「伊勢崎ニラ餃子」を開発。この味をもっと広めたいと販売方法を模索していたところ昨年、これまでなかった冷凍自販機ができることを知り導入をいち早く決めたという。冷凍ギョーザはニラ餃子(20個入り)のほか海老餃子(12個入り)、青森産にんにく餃子(15個入り)、爆汁餃子(12個入り)の4種(各1000円)。鶏白湯とあごだしの2種類の冷凍ラーメン(各800円)も。自販機の魅力について同店の内野公義代表は「お店の味が手軽に24時間いつでも買えるのは魅力」と話す。店舗運営に加え、自販機の代理店業務も行っているという。同店(0270-75-3638)。
途絶えた味、幼なじみと娘が復活
高崎市 餃子のみっちゃん家
設置場所:高崎市並榎町157-5、同市宿大類町903-1の図南FC
フットサルコート駐車場内、同市江木町1642-1業務スーパー敷地内
一昨年に地元に惜しまれつつ閉店した、高崎市並榎町の持ち帰りギョーザ専門店「餃子のみっちゃん家(ち)」が、自販機で復活した。同店は2012年にオープン。同市に住む関根美智子さん(57)が会社勤めする傍ら手作りギョーザを提供していたが、わけあって閉店。関根さんのギョーザの大ファンで幼なじみ鈴木健正社長(57)が「みっちゃんのギョーザがないと困る」と19年に復活させた。が、翌年コロナの影響もあり再度閉店。それでも諦めきれなかった鈴木さんは今年6月、高崎市内2カ所に自販機を設置し、再々復活へとつなげた。「是非工場長に」と鈴木さんから抜擢された、関根さんの長女麻耶さん(34)が母「みっちゃん」の味を忠実に再現する。「だまされた気持ちで始めてみたけど、結構反響があり嬉しい」と笑う。ギョーザは冷凍で1パック30個入り1000円。8月には同市江木町に3台目をオープンさせた。問い合わせはみっちゃん家事務局(050-3612-8004)。
生麺と生スープを冷蔵で
渋川市 かのうや
設置場所:渋川市北橘町下箱田625-189の店舗、前橋市六供町745、高崎市引間町1052
2019年10月に渋川市北橘町にオープンした、にぼしラーメンの店「かのうや」の狩野昭代表(48)は、コロナ前から進み始めていた外食離れの傾向に危機感を抱き、商品の効率的な販売方法として自販機に目を付けていたという。昨年、自家製の生麺と生スープを箱に収め冷蔵で提供できる自販機を考案し、実用新案として登録。昨年8月に店舗前に「零号機」と名付けた自販機を初めて設置した。今夏さらにコロナが感染拡大し、テイクアウトの需要が増えるだろうと予測した狩野さんは、当初秋に増設する予定だったのを7月に前倒しにし、高崎と前橋に2台新設した。反響が大きく、1日1回の補充ではすぐに売り切れとなってしまうため、2回に増やしていく予定。今後はアフターコロナを見据えた新たな展開も考えているという。また、自販機販売の代行も行っている。問い合わせは北橘町の店舗へ直接訪問。