今季B1に昇格した群馬クレインサンダーズは今月1、2日に開幕2連戦を迎えた。昨季準優勝チームの宇都宮ブレックスに対し2試合ともに延長戦の末、勝利。翌週、ホーム開幕戦(VS千葉ジェッツ)となった9、10日には、トップリーグで戦うチームの雄姿を一目見ようと、太田市運動公園市民体育館へ2日間合わせて約3000人の観客が訪れた。だが、昨季のチャンピオン・千葉は完成されたチーム。外国籍選手が多く入れ替わり、チーム作りの最中である宇都宮とは格段に違った。初日には、100点以上取られてゲームは敗北。2日目は最大22点差をひっくり返され逆転負けという洗礼を浴びる結果に。明日からのシーホース三河戦を前に、サンダーズの現状を選手のコメントから探る。 (星野志保)
王者相手に“現在地”を知る
「自分たちはB1でしっかり戦えるだけの力があると自信を持って戦おう」。トーマス・ウィスマンHC(ヘッドコーチ)が選手たちに声をかけて臨んだホーム開幕戦。千葉の得点源である富樫勇樹らに3ポイントシュートを高確率で決められた上、サンダーズの攻撃の核であるトレイ・ジョーンズの速攻は相手チームのディフェンスに止められ、74―103と大敗した。
千葉の大野HCは、「先週(島根戦)の反省点だったトランジションディフェンス(速攻に対する守り方)を1週間かけて準備した。選手たちがその成果をコート上で出してくれた」と勝因を語った。
サンダーズの攻撃の中心であるジョーンズのほか、マイケル・パーカー、アキ・チェンバースは、元千葉の選手。「『彼らにいかに気持ち良くプレーさせないか』にしっかりフォーカスしていた」と大野HCは語り、彼らの特徴を把握していた。また、彼らとチームメートだった千葉の富樫も「群馬は明らかにトレイ(ジョーンズ)のチーム。彼をどう止めるかが一番の問題だった」と完全にサンダーズの手の内を読んでいた。
今季、サンダーズでキャプテンを務める笠井康平は、「相手はガードだけでなく、ビッグマン(長身の選手たち)もタフにディフェンスをしていた。自分たちの強みが出ないまま攻撃のテンポも上げられず、試合全体を通じて少しずつ崩れていき、最終的にこういう点差になった」と振り返った。
ウィスマンHCは、「シーズン60試合の中、(時には)最悪なゲームもある」と選手をかばいつつも「戦術の前に、戦う姿勢が全くなかった!」と翌日の試合に向け奮起を促した。
攻撃の引き出しを増やすことが急務
翌10日の試合は、出だしからジョーンズの速攻がはまり、前日から一転してサンダーズが主導権を握った。しかし、千葉の大野HCは「バックコートで何もディフェンスをしない、フロントコートから頑張ればいいというディフェンスだったら、やられてしまうよ、トレイは素晴らしい選手だから」と前半の課題を修正してきた。これによりサンダーズは、最大22点あった点差を富樫の3Q終了間際の3ポイントシュートでわずか2点差まで詰められ、4Qに逆転を許すと81―97で千葉に連敗を喫した。
サンダーズの司令塔である五十嵐圭は、「試合の出だしは自分たちのリズムで、いい形でスコアできていた。しかし後半、相手がディフェンスの強度を上げてきたときに自分たちは対応できなかった。そこからミスにつながり、良い攻撃ができずに終わった」と肩を落とした。
一方、ホーム2試合を終え、見えた課題もある。それは、攻撃の中心であるジョーンズが封じ込まれたとき、次の攻撃の引き出しが少ないことだ。五十嵐も「トレイが抑えられれば負けてしまう。個人に頼りすぎてチームプレーがほとんどできていなかった」と指摘する。
また、千葉選手である富樫も「サンダーズは、タレントではしっかり勝てるチーム。でも、1試合を通して、(スタメン)5人とベンチメンバーも含め『チーム』として戦っていかないと、なかなか勝つのは難しいと思う」と、現時点でのサンダーズの弱点を見抜いていた。
この敗戦を契機に、チームで戦う大切さや、攻撃の引き出しを増やすことの必要性を、選手たちは感じているに違いない。まだシーズンは始まったばかり。チームの成長に期待したい。