権威ある展覧会RHSで最高賞受賞の快挙

ぐんま・なおみ/59年高崎生まれ。東京造形大学絵画科に在学中、新緑の美しさやその生命力に深く癒やされた経験から、“葉っぱ”をテーマとする創作活動に入る。1991年テンペラで克明に描く現在の作風を確立。著書に『言の葉 葉っぱ暦』『群馬直美の木の葉と木の実の美術館』など。東京都立川市在住

「 群馬特産の『下仁田ネギの一生』を
見て、読んで、味わって欲しいですね 」

葉画家 群馬 直美さん(高崎出身)

明日24日から前橋で凱旋展

原寸大の「葉っぱ」を克明に描く「葉画家」として知られる。先月、英国王立園芸協会が主催する、権威ある展覧会「RHSロンドン ボタニカルアートショー」(以下RHS)に初出展した作品が最高賞受賞の快挙を果たし、一躍脚光を浴びた。明日24日から前橋のヤマトギャラリーで開かれる凱旋展では、下仁田ネギをモチーフとした受賞作に加え、「葉っぱ」を描いた近新作など原画約40点を発表する。葉っぱに宿る命の輝きを追求し続ける群馬直美さんに、地元での凱旋展や制作への思いを聞いた。(中島美江子)

―RHSで最高賞を受賞しました
学生時代、新緑の美しさやその生命力に癒された経験から「葉っぱ」を描き続けています。38年間、脚色演出を一切せずそのものを原寸大で描くという葉画が、歴史ある協会主催の展覧会でどこまで通用するか挑戦したいと思いました。高いクオリティと正確さが求められるRHSで認められ本当に嬉しい。実は、受賞作の下仁田ネギを本格的に描くようになったのは今回の展覧会場で4年前に開催した個展がきっかけ。来場した県職員の方に下仁田ネギの原種が守られ、今も伝統農法で栽培されている地区があると教わりました。受賞に繋がる縁を紡いでくれたヤマトギャラリーには感謝の気持ちでいっぱいです。

「4月ネギの花」(下仁田町馬山・大澤貴則さんの畑にて)

―なぜ、下仁田ネギを描こうと思われたのか
祖父が八百屋をしていたこともあり、10年程前から野菜も描き始めました。群馬の特産の下仁田ネギは命の循環や輝きを追求する上でも、自分のルーツを探る意味でもピッタリのモチーフだと感じたのです。4年前から下仁田町馬山の農家を月1回訪ね、種まきから収穫まで約15か月に渡り伝統農法を体験させて頂きました。一世一代で終わらない循環する命を追い続けたことで、対象をより深く見られるようになった気がします。
―凱旋展の展示構成を教えて下さい
種取用のネギ坊主から出荷用や枯れ葉ネギまで、下仁田ネギの一生を描いた6点の組み作品に加え、リーフレット「ヤマトネイチャーサークル」の表紙用に描いたビオトープ園の植物作品28点などを初めて公開します。原画に添えたエッセイや版画、書、リーフレットなど約80点も一緒に紹介しますので、多彩な表現を楽しんでもらえたら良いですね。

―今展の見どころを教えて下さい
下仁田ネギの一生を描いた6作品をただ発表するのではなく、RHSでの雰囲気を感じてもらえるように現地の展示空間そのものを再現しようと思っています。また、下仁田ネギの作品と同時期に平行して描いていたヤマトビオトープ園の植物も紹介するので、ネギの成長と季節の植物を見比べて楽しんでもらえたらうれしい。創作の源が垣間見える展示になっていると思います。

「ツバキの実」
(ヤマトビオトープ園にて)

―制作する上で心掛けていることは何でしょう
私という人間はこの世に一人しかいないのと一緒で、私が出会ったネギも世界にたった1本しかない。替えがきかないものなので徹底的に描いています。手を抜けば、下仁田ネギの命も生産者の命も私の命も絵として定着しません。時間と手間をかけて、植物からの声というかメッセージにじっくり耳を傾ける。そうすると、植物と私の人生そのものが絵の中に入ってきて、表面的でない作品が出来上がります。38年間、私が葉っぱを描くことで生きる力を得たように、私の絵を見てくれた方に生きる力が伝われば良いですね。
―来場者へメッセージを
RHSの出品作やビオトープ園の植物原画を日本で発表するのは、今回が初めて。販売用の下仁田ネギだけでなく、普段なかなか見る機会のない種付け用のネギなどを描いた作品も展示しています。現地で感じたことや作業の様子を綴ったエッセイも添えてありますので是非、会場で群馬特産の「下仁田ネギの一生」を見て、読んで味わって欲しいですね。

【群馬直美個展 下仁田ネギの一生と、ヤマトビオトープ園の葉っぱたち】明日24日から9月27日まで、前橋のヤマト本社ギャラリーで開催。入場無料。土日祝日休館(ただし8月24、25、9月21、22日は開館、同4日間は作家来場)。同ギャラリー(027・290・1800)。

掲載内容のコピーはできません。