半年前、86歳の父に「お父さんが登った百名山の記録をまとめようよ」と軽い気持ちで投げかけた。思い出の玉手箱を開けてしまったから、さあ大変。50代後半から足掛け20年、北海道利尻山から鹿児島県屋久島の宮之浦岳まで100の山々への登頂記録をまとめることになってしまった。
父が喜んだのも束の間。家族の前に、段ボール一杯のセピア色になった写真という険しい山が出現した。母から「選べないよ、ノイローゼになりそう」と愚痴られ、「記念誌発行」は徐々に棚上げ状態になっていった。
だが、このGWの帰省をきっかけに、作業を再開できた。実家への丸3日の滞在で、順調に写真の選別ができ、冊子へのページ割まで進展した。50代の父は身体も引き締まっていて登頂時の笑顔もイケている。単独行が多かったが、山仲間からの手紙には、「励ましの言葉をもらったので、おかげでやっと下山できました」と感謝の言葉が綴られていた。70代では、同行した孫に登山のマナーや樹木の名前、自然について語る姿があった。登山を通して、ミドルエイジを生き生きと楽しんでいる様子が明らかになり、「やるな父」とつぶやいてしまった。
令和元年の初仕事はお金にはならなかったが、思いがけず学びも多く、気持ちもリフレッシュできた。これから本来の仕事も頑張れそうだ。令和の時代にどう生きたらいいのか、大きなヒントをもらえた気がする。
(谷 桂)