「松本竣介《街》と昭和モダン」展
大川美術館では、公益社団法人糖業協会との共催で、「松本竣介《街》と昭和モダン」展を開催しています。
糖業協会の美術コレクションは1936年の創設期から続けられ、そのコレクションには安井曾太郎(1888~1955年)、梅原龍三郎(1888~1986年)、中川一政(1893~1991年)、曾宮一念(1893~1992年)など、昭和戦前期から戦後に活躍した画家たちの充実した作品が多数含まれています。本展では、同協会のコレクション61点に当館の所蔵作品を加えた約140点を5章にわたり紹介しています。
例えば、「松本竣介—モダンガール」の章では安井曾太郎と松本竣介(1912~1948年)の描いた女性のイメージを展示室内で重ね合わせ、あるいは比較しつつご覧いただけます。
安井曾太郎の《女と犬》(1940年)は、西洋風な印象をあたえる場所で、和服姿の女性が犬を撫でています。明るい色面とのびやかな筆致によって、和と洋とがじつになめらかに交じり合った絵画といえましょう。成熟期を迎えた安井52歳の一点です。
一方、松本竣介の《街》(1938年)は、竣介26歳のときの作品です。無国籍風な都市の断片が、大きな画面のなかに散りばめられています。中央に配された女性の存在は、どこか表象的です。彼女がまとっているのは、ワンピースにハイヒール、さらには、モダン都市東京の雑踏そのものでもあったのかもしれません。
両作が描かれた頃、街にはモボ・モガが流行していました。都市には、コンクリートやガラス、タイルをとりいれたビルや駅が新しく建築された時代。ことに竣介は、そうした街の様相や文化に、敏感に反応し描きました。今回は、竣介のスクラップブックもあわせ紹介しています。そこには、映画女優や街の人々の装いなど、雑誌や新聞の切り抜きが数多く集められています。
多彩な視点から「昭和の美術」を読み解く機会となれば幸いです。ここでは、5章の展示から、ほんの一部を紹介しました。続きはどうぞ展示室で。
■大川美術館(桐生市小曽根町3・69)■0277・46・3300■一般1000円、大高生600円、中小生300円■12月12日まで■午前10~午後5時(入館は午後4時半まで)■月曜休館(月曜祝日の場合は翌日火曜休館)