「被災地」を写真と言葉で
2011年3月11日の東日本大震災から今日で丸11年。前橋と高崎で開かれている3つの展示を紹介する。
反町准也写真展
前橋のムーカフェで19日まで
前橋市在住の写真家、反町准也さん(53)の写真展「can you see it?」がムーカフェ(同市住吉町)で開かれている。昨年、クラウドファンディングで協力を得て出版した同名の写真集から、10点を展示している。
反町さんは、東日本大震災後の2016年から20年までの5年間、福島県南相馬市や楢葉町に毎年通って撮影を続けた。現地の人とは、あえて交流をしないで「よそ者」としての視点を大事に、その時々に自分の目に見えた風景や感じたものを捉え、写真にしている。
誰もいない夏の海水浴場や新たに造成された防潮堤の上をランニングする人、アスファルトの割れ目に生えた雑草、海岸沿いに群生する光輝く植物など。海や空、光、雑草など、どれも見たままの景色と対峙して、「福島の空気感」を作品に落とし込み、言葉を添える。
反町さんは、母が亡くなったことをきっかけにして、詩を書き、写真を撮影し始めた。初個展の準備中に大震災が起こり、戸惑いもあったが、「あしたがある保証はない」と前向きに、撮影して作品に言葉を添える。「見た目では分からない風景の記憶のその先を考えてみたい。ぜひ、この機会にゆっくりとご覧ください」と呼び掛ける。観覧無料。
なお、ムーカフェでは、期間中、「東北厳選美味支援物資市」を開催。また、12日は、非常食の試食提供も予定している。定休日は水、日曜。問い合わせは同店(027・288・0348)へ。
最後の全国文学館共同展示
前橋は詩、高崎は短歌で
前橋文学館と高崎の県立土屋文明記念文学館では、全国文学館協議会共同展示の一環で、共通テーマ「文学と天災地変」の特別展示を行っている。ともに観覧無料で21日まで。震災の記憶を風化させまいと同協議会加盟館が2013年から毎年開催。10回目の今年で最後となる。
【前橋文学館】「言葉は風化せず寄り添うのみ」と題し、福島県福島市出身、在住の詩人・和合亮一さんの詩と写真をパネルにして紹介している。和合さんは、3・11直後からツイッターで詩を発表し反響を呼んだ。
今展では震災のほか、コロナ禍など現在の社会情勢をふまえ生み出された和合さんの詩を、本人撮影の花や風景の写真とともに屋外壁面=写真=と1階ロビー(言葉のみ)で展示。同館学芸員の新井ゆかりさんは「和合さんの活動や心に響く力強い言葉を通して生きる勇気を見出してもらえたら」と話す。16日休館。同館(027・235・8011)。
【土屋文明記念文学館】「アララギ歌人と関東大震災」と題し、1923年の関東大震災と、文明(高崎出身)が所属していた短歌の会派「アララギ派」の歌人たちが震災とどう向き合い、どのような作品を生んだのかを紹介。妹と連絡が取れない不安を綴り島木赤彦へ送った文明の書簡をはじめ、東京で被災し家族を亡くした高田浪吉の震災詠を収めた歌集、短歌誌「アララギ」の、震災直後に発行した「震災報告号」など、パネルを含む全15点で紹介=写真。同館学芸係の佐藤直樹主幹は「震災下で詠まれた短歌は単なる作品ではなく記録としての役割を持っているとも言えます。自然災害について改めて考えるきっかけにしてほしいですね」と話す。14、15日休館。同館(027・373・7721)。