農業関係者向けの日刊紙「日本農業新聞」の1面や社会面を今週、高校野球の記事が飾りました。秋田代表・県立金足農の躍進を伝える内容です。他の連載企画を休み、「農作業どころじゃない」と試合に駆け付けた農家さんの言葉を紹介しました。
決勝進出を決めると全国農業高校長協会は、「農業人の心を耕す、103年ぶりの快挙」と公式サイトに掲載。協会理事長で勢多農林の校長、福島実さんは朝日新聞の取材に「農業高生や卒業生に大きな勇気と誇りを与えてくれた」と喜びました。
劇的な勝利を重ねるにつれ、農業者や地元秋田、東北勢だけでなく、全国から広く応援や支援が集まりました。とくに決勝の相手は、中学から全国レベルで活躍する精鋭集団。比して金農は県内出身者のみ。中3の秋に「金農行かない?」と誘い合った仲間だといいます。
「公立で甲子園を目指そう」と中学から誘い合って進学し、今夏の群馬大会で8強入りした藤岡中央の逸話を思い起こしました。高崎商は4強に食い込み、春の関東王者を苦しめました。ただ夏の甲子園出場はこの6年、私学2強で占めています。
全国56代表のうち、公立は8つでした。夏の全国優勝は89回大会の県立佐賀北からありません。もちろん、甲子園を目指して親元を離れ、練習を重ねる球児たちの努力には胸打たれます。一方「金農旋風」は、人口減少続く地方都市に活力や誇りを取り戻す意義を感じさせました。ファンに愛される大会として継続するには、日程を含めもっと工夫が要ると認識させられます。
(朝日新聞社前橋総局長 岡本峰子)