どんぐりが好きだと気がついたのは27歳。林間学校の施設で働いていた時である。「どんぐりはどんぐりだろう」と思って調べてみると、日本産が22種類、外国産も合わせると30を超え、世界には1000種類近くあるという。それ以来、日本中の森を旅してはどんぐりを拾い集めるようになった。
どんぐりを拾っていると自然と木々に目がいく。とりわけ、日本人が昔から使ってきた杉やヒノキなどの木材に興味が湧いた。脱プラスチック・脱炭素が叫ばれる現代において、木材は土に還る優秀な素材であることに気づく。
「それならば」と、クヌギやブナなどの「どんぐりの木」でどんぐり型の木工品を作ろうと意気込むが、すぐに壁にぶつかる。ホームセンターでは外国からやってきた木材や合板ばかりで、日本のどんぐりの木は売っていない。
そこで林業を営む友人に相談し、どんぐりの木の丸太を入手。木の割れを防ぐため、製材所で板に製材して加工してみた。すると、今まで見かけていた小さな木工品から住宅まで加工方法や技術は様々で、一つの木工作品を作る際にも、たくさんの人の手が加わっていることに気付いた。
現在は、どんぐりをモチーフとしたネックレスやイヤリングなど木工品の販売、どんぐりクラフト講座、どんぐり図書館、木工ワークショップを行う。SNSでどんぐり情報の発信やLINEスタンプも出来上がった。さらに発想を広げ、どんぐりの木だけでなく、地元の木を使う意義や「屋久杉」といった名木の価値についても伝えたい。
「どんぐりの芽を木に育てる」ような小さな活動だが、かわいくて馴染みのある「どんぐり」だからこそ、誰もが森林や自然環境について考えるきっかけになると信じている。