「宿題しなさい!」という言葉を、子どもたちに対して言った経験のある保護者は少なくないはず。習い事の増加、一人一台以上のデジタルデバイスの普及、また、全国の65%が共働き世帯と言われるせわしい現代の生活スタイルでは、親と子供の接する時間が減少しているのではと危惧します。私の家族もその例に漏れず、開業前は夫婦ともに帰宅後の家事に時間を取られ、子供たちに寄り添う時間が少なくなっていました。
2020年2月に開業した喫茶店「木下商店」では、帰宅から就寝までの貴重な家族の時間を和やかに過ごしていただくべく「宿題カフェ」を運営しています。
小学校が終わると、利用者(生徒)は自宅に帰るのではなく、木下商店にみんなで来店します。手洗いうがいを済ませたら、ボランティアの方が付いて宿題を終わらせます。その後、お店で販売している自家製の焼き菓子やドリンクをおやつに食べ、保護者が迎えに来るまで一緒に遊ぶ、という仕組みを喫茶店に組み込みました。
親子の甘えからか一緒に宿題をしているとお互いにイライラしてしまったりダラダラと時間がかかったりしますが、不思議なものでボランティアという他人に見てもらうことにより短時間で終えることのできる子がほとんどです。実際に、利用者の保護者からは「お互いが心に余裕を持って家での時間を過ごすことができる」とのお声を聞くことができました。
また、私的な希望ではありますが、利用者の子どもたちには、家族ではない人と接することで年齢を超えたコミュニケーション能力が身につけばと期待する一方、ボランティアには教員を目指す学生が多いため、教育実習とは別の練習かつ実践の場になればと考えています。
オシャレなランチをするだけが喫茶店の役目ではなく、人が集い、そこから生まれる出会いやつながりを創出するお手伝い、家族団らん、地域団らんをこのお店が担えたら嬉しく思います。