ぐんまの昆虫食 食べたことある?

魅力ある昆虫食を届けたい

世界の食糧危機の対策や未来のタンパク質として注目を集めている昆虫食。最近、スーパーや土産物店、自販機でも見かけるようになりました。群馬県内でも昆虫食をコンセプトにした店や開発する企業があります。県内の2社に、昆虫食とはどんなものなのか、携わる思い、商品について聞いた。

昆虫由来のおしゃれなケーキやドリンクを楽しんで
灯螂舎
とうろうしゃ (前橋)

前橋市大胡、荒砥川のほとりにあるトタン張りの倉庫をリノベーションした店内で、手作りの焼菓子や昆虫雑貨を扱う灯螂舎。トウロウとは蟷螂(カマキリ)のこと。「五感で楽しむ昆虫」をコンセプトとした店作りを行うのは、店主の大澤栞那(かんな)さん(27)だ。

「無理強いは一切しません。あくまでも、昆虫食に興味を持った方に、焼菓子を通じて新しい食体験をお届けできれば」と大澤さん。差し出しているのは、青リンゴのような爽やかな味わいのタガメサイダー

小さい頃から昆虫が大好きだった大澤さん。出身地の東京ではIT企業に勤めていたが、「自分でお店をやりたい」思いがあふれる。縁あって前橋市へ移住した2017年当時、昆虫食はいわゆる「ゲテモノ扱いだった」という。だが、徐々に「食材としての価値」が見直され始めると、昆虫食事業に取り組む企業も増加。この転換期に好きな昆虫をテーマに店を始めたいと、21年に開店した。

食用のコオロギ、蚕、黒スズメバチなどの昆虫を取り入れるが、「見た目に虫を感じない」オリジナル焼菓子やドリンクを提供。最初はもの珍しさから手に取るが、リピーターのファンもついてきた。蚕蛹入りの「バスクチーズケーキ」やコオロギ入りの「カシューナッツ&タイムのサブレ」、「胡桃&シナモンのビスコッティ」など見た目にもおしゃれなケーキやクッキーを販売。特に同店では、様々な「食用昆虫」と相性の良い香辛料やハーブを組み合わせ、それぞれの味や香りを最大限に生かすことで、唯一無二のおいしさを追求している。その他、「蚕沙」(さんしゃ)と呼ばれる桑の葉を食べた蚕の幼虫の未消化物(ふん)のお茶「蚕沙茶(600円)」など昆虫由来のドリンクも提供する。「一見、虫らしさを感じることはなくても、食べすすめるうちに、味わったことがない豊かな風味を感じてもらえるはず。少しずつ楽しむ人が増えてくれたらうれしいです」と、大澤さんは教えてくれた。

「全粒粉のスパイスキャロットケーキ」

すりおろした人参がたっぷり入ったスイス香る大人のキャロットケーキ。コオロギの風味は香ばしさとして感じられる。昆虫食ビギナーの方にもおすすめ。(ホール2000円/カット450円)
編集部食レポ📓 しっとりして味わい深いおいしいケーキでした。

「へぼ(クロスズメバチ)のフロランタン」


岐阜県の恵那地方などで昔から食用として親しまれてきた「ヘボ」ことクロスズメバチを、フランスの伝統菓子フロランタンで。(単品360円)
編集部食レポ📓 貴重なヘボとあって、味わって食べました。とてもおいしかった。

■前橋市大胡町97-1
HP: https://tourousha.jp/
店舗のほか、オンラインショップあり。マルシェ出店などもある。

もう一回食べたい商品に
FUTURENAUT
フューチャーノート(高崎)

高崎経済大学発のベンチャー企業FUTURENAUT(フューチャーノート)は、昆虫を使った食品の開発や研究をしている。社長を務めるのは櫻井蓮さん(25)。同大大学の教授と共に「もっと昆虫由来の食品を創造して、環境問題や食料危機のリスク低減に貢献しよう」というビジョンの下、2019年に会社を立ち上げた。同社によると、「世界人口の増加に伴いタンパク質需要が高まって、近い将来タンパク質が不足する可能性がある中、未来のタンパク質の1つとして『昆虫』が注目を集めている」という。

高崎経済大の構内で昆虫を使った食品の開発や研究をしている櫻井蓮社長。会社のロゴにしているのは、かわいいクリケット(食用コオロギ)

櫻井さんは、新潟県出身で、同大の地域政策学部に在籍していた2年の時、飯島明宏教授のゼミに所属。昆虫食の先進国でもあるタイで、フィールドワークをしながら「昆虫食」の可能性に興味を持ったという。同大学院に進学した後も、「昆虫食には、抵抗感を持つ人が多く、心理的ハードルがかなり高い」と実感。心理学研究やマーケティング研究に基づいた商品開発に力を入れてベンチャーとして起業。形を見えなくしたコオロギパウダーを開発し、チョコレート菓子などの商品を開発。その他、企業との提携やセミナー開催などを通して食育にも力を注ぐ。

会社設立から3年を経て、さらに瞬間冷凍をして新鮮なものを加工し、食材として、さらに気を配る。先月からは、初の試みとして、昆虫としての姿形を活かし、カリッとした食感のおつまみ菓子「まるごとクリケット(各5グラム、5種類セット価格2000円)」も発売した。「今までは、めずらしいもの、インパクトのあるものとして、捉えられていたが、これからは、食べる楽しさ、おいしさを大切に、もう一回食べたい商品にしたいですね」と気持ちを込める。

「コオロギのチョコクランチ」1箱(2本入)

食用コオロギ特有の「炒ったナッツ」のような香ばしい風味と、大豆クランチの「ザクザク」した食感が特徴的な、新世代のチョコレート。
編集部食レポ📓 あれ?普通においしいクランチチョコ。低糖質であることもうれしいポイントです。

「まるごとクリケット(5種セット)」

群馬県産のイエコオロギをフライし、きな粉、ガーリック、ピリ辛ごま油味などで調理。各シーズニングがクリケットの風味を引き出し止まらない味に。(5種セット各5g 2400円)

編集部食レポ📓 目をつぶり、アーン、パクッしてみました。サクッとしていて、おいしい味。ビールのお供にも。

■オンラインショップ ( https://futurenaut.co.jp/ ) で購入可。
県庁32階の自販機、高崎駅2階の「群馬いろは」でも購入できる。

※食レポは編集部の感想です。甲殻類に似た成分を含むので、アレルギーの方はご注意ください

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