国指定史跡 女堀 (Vol.39)

史跡に指定された県内の貴重な遺跡や古墳などを担当者が紹介

1983(昭和58)年10月27日指定

謎多き、未完成の大規模用水路

花しょうぶが植えられた女堀の初夏の様子

女堀(おんなぼり)は平安時代の終わり頃(約800年前)に造られた大規模な灌漑用水路の跡です。前橋市上泉町の桃ノ木川(旧利根川)から取水し、伊勢崎市田部井町までの長さ13キロ㍍にも及ぶ大規模なものでした。

女堀は全国的にみても非常に珍しい遺構ですが、古文書等には一切の記載がありません。誰が、いつ、何の目的で掘られたのか「謎」とされ、その名称から「女性が一夜にして掘った」などさまざまな伝説も残されています。

女堀の謎は発掘調査によって徐々に明らかになってきています。女堀の堀部分を掘った土は脇に土手状に盛り上げられていますが、その土手の下からは1108(天仁元)年に噴火した浅間山の火山灰が確認されました。そのため女堀の築造年代がこの年以降ということがわかったのです。女堀の終点は淵名荘にあたることから、この工事を実施したのは淵名荘を開発した淵名氏とも考えられています。全国的に荘園開発が進む中、この地域でも水田の灌漑用水事業として女堀が計画され、前述の浅間山の噴火で被害を受けた地域の再開発と合わせ、女堀の開削工事が進められたものと考えられます。

しかし、調査の結果、この用水路は未完成のまま終わっており、その理由として工事の失敗説や淵名氏が合戦に敗れたなど、さまざまな説が出されています。

現在の女堀では管理・活用の一環として、1989(平成元)年から花しょうぶを植栽し、国指定史跡女堀「赤堀花しょうぶ園」として、県内外から多くの方が来園される花の名所になっています。

桜が咲く春の女堀

伊勢崎市文化財保護課文化財保護係
出浦 崇 さん

いでうら・たかし/1972年生まれ。埼玉県上里町出身。1997年3月国士館大学文学部歴史地理学科卒。1998年4月伊勢崎市役所入職。2022年4月から現職

きてみて
国指定史跡女堀「赤堀花しょうぶ園」/伊勢崎市下触町213/開園期間:6月18日まで/休園日:なし/入園無料/開花中は駐車代500円/約25000株の花しょうぶが植えられ、毎年6月上旬から下旬に開花。品種は江戸・肥後・伊勢系。あじさいのエリアもある。現在見頃。/問い合わせ:同市赤堀支所庶務課( 0270-62-1151 )

 

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