連日熱戦が続く第105回全国高校野球選手権記念群馬大会。手に汗握る試合の攻防だけでなく、球場でついつい見入ってしまうのが、グラウンド整備の時間だ。
群馬大会では試合開始前と終了後、そして試合中は5回裏が終わったタイミングでグラウンドが整備される。補助員の野球部員や高野連の先生方やOBの方々が整地用の「トンボ」や「ブラシ」を手にグラウンドに入る。整然とした動作で、さっきまででこぼこだった場所が平らに、美しくならされていく風景は、不思議な静謐さに包まれている。
単なる「整備」を超えた特別な気持ちが込められているようで、元球児にグラウンド整備の「意味」を聞いてみたら、こんな答えが返ってきた。
「ケガのないように整地するのはもちろんだけど、グラウンドにいる神様に向けての儀式的な意味もある。いいかげんな整備をするとケガするし、エラーもする。精神的なものだけど、本当の窮地に立ったとき、グラウンドの神様が救ってくれることがある。」
――グラウンドの神様。その言葉を聞いて、合点がいった。球場で目にする整備の風景に心が動くのは、土をならすひとかきひとかきから、それぞれがグラウンドを想う気持ちが伝わってくるからだ。
整備後、散水が終わったグラウンドはどこか神秘的で、確かに「神様」がいるのでは、と思わされる。大会は27日まで。ぜひ球場に足を運んで、グラウンドの神様を感じてみてほしい。
(朝日新聞社前橋総局長 宮嶋 加菜子)