ときにかわいらしく、ときにアヴァンギャルドに

企画展示「堀内誠一 絵の世界」

『ぐるんぱのようちえん』1965年/『たろうのおでかけ』1963年/『こすずめのぼうけん』1976年/《パリの名所絵地図》1980年 すべて部分 ©Seiichi Horiuchi

現在、当館では企画展示「堀内誠一 絵の世界」を開催中です。本展では、絵本作家でデザイナーの堀内誠一の作品を紹介するものです。堀内は1987年に亡くなるまで60冊以上の絵本を描き、一方で時代をリードするデザイナーとして一世を風靡しました。そんな堀内の「絵の世界」を紹介する企画展示では、若いころに描いた油絵から、絵本の原画、デザイン画など約250点を紹介しています。

絵本原画を見ていると、いろいろなタッチの絵があることに驚かされます。堀内は、お話にぴったり合う絵を描こうと工夫を凝らし、そのため絵本はそれぞれ画材も描き方も違います。たとえば、象の「ぐるんぱ」が主人公の『ぐるんぱのようちえん』では、水彩絵の具の鮮やかな色の絵となっています。それに対して『おおきくなるの』は、フィルム状のカラーシートで色面を組み合わせたスタイリッシュな絵が際立ちます。

堀内誠一が手がけたロゴデザイン 1970~1982年 ©Seiichi Horiuchi

デザイナーとしての堀内は、「anan(アンアン)」や「BRUTUS(ブルータス)」などの雑誌創刊にあたり、誌面のレイアウトやロゴなどのデザインにとどまらず、コンセプトや内容など編集も含めた仕事をしています。そのうえ、文中のイラストのほか表紙の絵を描くこともあり、取材をこなし記事を書いているのですからマルチタレントぶりが伺えましょう。これらの雑誌は、ファッションや旅の楽しみを盛り込んだ新鮮な誌面で人気を集めました。

さらに今回は、旅人としての側面にも注目しています。堀内は、約8年パリに住み世界中を旅しました。旅先を描いた地図やスケッチのほか、身の回りに置いていた品々などたくさんの資料も展示しています。

ときにかわいらしく、ときにアヴァンギャルドな、堀内誠一の多彩な世界をお楽しみください。

県立館林美術館 学芸員
伊藤 香織 さん

県立歴史博物館、県立近代美術館を経て2019年より館林美術館学芸員。担当した展示に「サラ・ベルナールの世界」(2018年)、「大下藤次郎と水絵の系譜」(2020年)、「ものがたりの予感」(2022年)展など

県立館林美術館(館林市日向町2003)■ 0276-72-8188 ■12月17日まで■午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)■月曜休館■入館料一般830円、大高生410円。中学生以下、障害者手帳等をお持ちの方とその介護者1名は無料。群馬県在住の65歳以上の方は平日のみ2割引き。10月28日(土)群馬県民の日は無料。

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