日本で独自に花開いた数学「和算」の大家・関孝和(1708年没)を顕彰する第71回全日本珠算競技大会が11月3日、ゆかりの藤岡市で開催されました。15都道府県の約250人が参加し、そろばんの腕を部門別に競いました。私も開会式に参列しました。緊張を和らげるために手のひらに人の文字を書いてのみ込むしぐさをする女の子、はちまきをして気合を入れる男の子。会場は凜とした雰囲気に包まれていました。
関孝和は同時代のニュートンやライプニッツと並び、世界の三大数学者と称されます。和算の理論で円周率を小数点以下11桁まで求めるなど大きな功績を残しました。生誕地は定かではありませんが、藤岡で生まれたとも言われています。藤岡の武士の子6人きょうだいの次男。父親を亡くし、関家の養子に。後に幕府の財政などを担当したそうです。
私は藤岡市で育ち、学校の先生に関孝和のことをよく聞かされました。すごい人が輩出した地に暮らしていることを誇りに思ったものです。家の近くの寺で開かれていた珠算教室にも通いました。桑畑の間の道を通り、野良犬に追いかけられながら帰宅を急いだのをよく覚えています。腕前はあまり上がりませんでしたが。
習い事は「非認知能力」を養うといわれます。非認知能力とは、自制心や協調性、忍耐力、誠実さ、リーダーシップなど目に見えない気質をさすそうです。珠算にも自分にも真剣に向き合う子どもたちの成長を願い、その姿を、まぶしく眺めました。
(朝日新聞前橋総局長 八木 正則)