「きれいやなあ。京都みたいや」「京都には温泉はないけどな」。12月のある日曜の草津温泉。関西から訪れた若い女性2人組が、湯畑近くの街並みを眺めながら、そんな会話をしていました。私は京都総局に3年勤務しましたが、たしかに祇園に似た風情を感じます。そもそも草津には日本三名泉に挙げられる温泉が武器としてありますが。
草津には1970年代から時折訪れていました。最近訪れたのは10年ほど前ですが、その頃と比べても大きく景観が変わりました。おしゃれな木造建築が目立ち、夜はライトアップが楽しめます。コンビニ店の看板まで景観に配慮されていました。
町や観光協会などとの意見交換会で黒岩信忠町長に戦略を尋ねました。「東京を見ずして地方を語るな」が持論。「まねをしても勝てないのだから東京にはないものをつくるという発想をした」。たどりついたのは「歴史を100年、150年戻すこと」。古風な街並みの良さを演出し、さらに100年先も通用する街づくりをめざしているそうです。入り込み客数はV字回復を遂げ、コロナ禍では一度下がりましたが一昨年は回復して316万人に上りました。
2021年に「裏草津地蔵」を整備し、昨年は渋滞解消のための立体交差を利用した「温泉門」が完成。草津温泉スキー場の新しい大型ゴンドラや展望レストランもお目見えしました。「草津温泉に完成はない」と黒岩町長。様々な打ち手が続きます。ちなみに私は1泊目はあえて5千円以下のお安い宿に、2泊目は有名旅館に泊めてもらいました。旅行者のニーズは様々です。草津の多様性を感じた旅となりました。
(朝日新聞前橋総局長 八木 正則)
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