強烈で個性的な美術コレクターの情熱感じて

「大川栄二生誕100年記念 コレクターの目」

松本竣介《婦人像A》1942年 大川美術館蔵

当美術館の創設者で初代館長の大川栄二(1924~2008年)の生誕100年を記念して、大川コレクションを二部構成でご覧いただきます。

大川栄二は、1924年に桐生市に生まれ、1946年に三井物産に入社、ダイエー株式会社副社長、サンコー(現マルエツ)社長などを務めた実業家でしたが、入社後まもなくの25歳から3年間肺結核を患い、若くして暗く孤独な入院生活を強いられました。その厳しい闘病生活のなかで、当時の週刊誌の表紙に使われていた作品を切り抜いて眺めるようになったことが、やがて数十年におよぶ強烈で熱心な美術コレクターとなるきっかけだったといいます。
自ら「サラリーマン・コレクター」と称し、仕事の傍ら作品を収集した大川。なかでも松本竣介の作品に魅了され、松本竣介と野田英夫を中心にコレクションの幅を広げてゆきます。そのなかでつくりあげたのが、「松本竣介・野田英夫と人脈」(以下「人脈図」)です。本展の第1章「大川栄二の『松本竣介・野田英夫と人脈』」ではこの人脈図をもとにコレクションを展覧します。第2章「大川栄二の『異色』の画家たち」では、大川によって発掘された「異色」の画家たち6人の作品を展示いたします。

昭和の時代を駆け抜け、1989年に平成の幕開けとともに美術館として竣成した大川コレクションは、現在では7500点を数えます。本展では大川が最初に手にした松本竣介の作品《ニコライ堂の横の道》をはじめ、大川栄二が自身の目で選び集めた作品をご紹介します。多彩な作品の数々をあらためて見渡すと、美術史的な文脈だけでなく、また個展では味わえない、コレクターの感性も感じられるでしょう。ひとりの個性的なコレクターの美術への情熱を、コレクションを通してご覧ください。

難波田史男《海の交換手》1967年 大川美術館蔵

大川美術館    学芸員
大谷 明子 さん

北海道大学大学院文学院修了。苫小牧市美術博物館を経て2022年より大川美術館に勤務。「東海道五十三次漫画絵巻と歌川広重「狂歌入東海道」」(2022年)、「20世紀アートセレクション」(2023年)などを担当。

大川美術館
■桐生市小曽根町3-69 ■0277-46-3300
■一般1000円、大高生600円、中小生300円■3月31日まで■午前10~午後5時(入館は午後4時半まで)■月曜休館(月曜祝日の場合は翌日火曜休館)

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