「文学と、草木染と―山崎斌のこころざし―」
普段、私たちが何気なく使っている「草木染」という言葉。この言葉を命名したのが、今回取り上げた山崎斌(やまざきあきら 1892~1972年)です。昭和初期、化学染料による染色と区別するため、草根木皮による染めを「草木染」と名付け、染色や手織、手すき和紙の復興に取り組んだ人物です。
染色の世界では有名な山崎斌ですが、文学者としても活躍していたことはあまり知られていません。本展では、山崎の文学者としての側面や文化人たちとの交流、草木染・手織物の復興運動、志を受け継ぐ子息らの草木染作品などを紹介しています。
山崎斌は長野の山村に生まれました。10代の時に歌人の若山牧水と出会い、親しく交流すると共に、自らも文学を志し作品を発表していきます。デビュー作『二年間』は、女性の手紙58通からなる小説。本作は、あの島崎藤村をして「第二の国木田独歩が生れた」と言わしめました。
若山牧水が山崎斌に宛てた手紙は、ぜひご覧いただきたい資料の一つです。2人の関係の近しさ、親しみが文面からあふれています。酔っ払って書いたようなはがきや、ジョーク混じりの近況報告、弱っている自分の内面の吐露など、思わず引き込まれる手紙を展示しました。
山崎斌が生涯にわたり師と仰いだ島崎藤村の資料にも注目です。山崎に依頼された書「簡素」の軸や、山崎が仲人をした、藤村の末娘の婚礼写真のほか、山崎の草木染復興運動を「ウイルヤム・モリスの仕事に近い」と讃えた藤村の直筆原稿もぜひご覧ください。山﨑斌の息子で、高崎市で染色活動を行っていた山崎青樹の仕事を絶賛した、川端康成の直筆原稿も見どころです。
このほかに、山崎の行った復興運動に関する資料として、着物や縞帳(織見本)、生活文化雑誌『月明』や、手すき和紙などを展示。息子の青樹、孫の和樹、樹彦の草木染作品も揃えた展示室内は色あざやかです。
新型コロナウイルスの影響で、会期が7月31日までに変更になりました。入館時のマスク着用など、お客さまにはご迷惑をおかけしますが、ご来館をお待ちしております。
■県立土屋文明記念文学館(高崎市保渡田町2000)■027・373・7721■7月31日まで※最新の開館情報はHPに掲載■午前9時半~午後5時(観覧受付は午後4時半まで)■火曜休館■一般410円、大高生200円(中学生以下無料)