好相性に驚き! クラシック専用ホールと和楽器の響き

高崎芸術劇場 「三味線・本條秀慈郎」

座席数を半分に制限した音楽ホール=高崎芸術劇場

最近、めっきりと涙腺が緩くなった気がしています。徐々に舞台公演が再開される中で、私たちの劇場にお客さまを迎えている時や、出かけたホールの座席で感情が敏感になっているせいか、ふとした瞬間にこみあげてくるものがあるのです。また、本来そこにはないはずの音や風景を感じるようになりました。

先月、高崎芸術劇場で久しぶりに開催された群馬交響楽団の定期演奏会では、ベートーヴェンの「田園交響曲」を2階席で聴きました。

不思議な体験をしたのは終楽章でのこと。雷雨、嵐を大合奏で描いた前楽章から一転、暗雲が途切れて陽の光がやわらかく射してくるのですが、終盤の木管楽器による最弱音のアンサンブルから、楽譜にも舞台上にもないパイプオルガンの音が聴こえてきたのです。それは、村の小さな教会にでも迷い込んだかのような、祈りに満ちた調べでした。

今日16日と明日17日に開かれる群響の定期演奏会では、チェコの作曲家スメタナの大作「わが祖国」が演奏されます。「田園」と同様に聴覚を失った作曲家による作品が続くのは、誰かが意図してなのかどうか。前回と同じ2階席前列のチケットを買いました。眼下に滔々と流れるモルダウ川、またはプラハの古城の光景が立ち現れる――。そんな幻想をひそかに抱いています。

長かった休館から公演を再開する中で、古典と現代、クラシックとポップスといった括りの意識が薄らぎました。中止した公演の代替をジャンルレスに企画しています。

その中で手ごたえを感じているのがいわゆる〝邦楽〟です。

先月、急きょ企画・開催した尺八と箏のステージは即日完売となる好調ぶりでしたが、何より当劇場内のクラシック専用ホールと和の楽器の響きの相性が抜群なことには驚きました。舞台スタッフも、その音色が映える照明を探究しています。

12月には三味線の本條秀慈郎さんを迎えます。ギターのジミ・ヘンドリックスをも彷彿させる超絶の撥さばきで、どんな情景を現出するのか。想像は尽きません。

三味線奏者・本條秀慈郎さん

高崎芸術劇場部事業課長
串田 千明 さん

74年藤岡生まれ。東京外国語大学卒後、97年に高崎市役所入庁。国際交流、観光振興、文化事業担当を経て2015年から高崎市文化スポーツ振興財団(現・高崎財団)に出向。現在、高崎芸術劇場のコンサートの企画などを担当

■高崎芸術劇場(高崎市栄町9・1)■三味線・本條秀慈郎「超絶最新 三味三昧」■12月1日午後1時半開演、同劇場音楽ホール■027・321・3900■全席指定一般2000円、※未就学児入場不可・定員の半分以下の座席販売

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