時代経ても色褪せない、夢二の作品世界

竹久夢二の美人画とモダンデザイン ―美しいもの・可愛いもの―

竹久夢二《七夕図屏風》1922(大正11)年 金沢湯涌夢二館

当館で開催中の企画展「竹久夢二の美人画とモダンデザイン -美しいもの・可愛いもの-」では、竹久夢二(1884~1934年)の肉筆画を始め、書籍の装幀、雑誌の表紙や挿絵、絵葉書、楽譜など夢二が手がけたデザインの数々を紹介しています。

岡山県に生まれた夢二は、1905年(明治38)、雑誌に挿絵が入選したことをきっかけに頭角を現し、1909年(明治42)に発行した『夢二画集』で一躍有名になります。そして、抒情溢れる美人画をたくさん描き、「夢二式美人」という言葉も生まれました。

大型の屏風作品である《七夕図屏風》は、七夕の季節、着物姿の女性が願い事を書いた短冊を笹に取り付けようとする姿を描いています。花や鹿の子模様が丁寧に描かれた赤い帯は、画面の中でも一際目立ち、面長な顔立ちをして思慮深い眼差しの女性像は、いかにも夢二式美人らしい特徴を備えています。「七夕」は、夢二が好んで描いた題材であり、雑誌の表紙や挿絵にも頻繁に登場しました。

千代紙「三角模様」(みなとや版)千代田区教育委員会

また、展覧会では大正から昭和にかけてのモダンデザインの様相にも着目しています。色彩や構成に対し瑞々しい感性の持ち主であった夢二は、デザイナーとして商業デザインの分野でも活躍しました。1914年(大正3)、夢二は日本橋に自らデザインした絵葉書や千代紙、封筒などの日用品を販売する「港屋絵草紙店」を開きます。それらの商品は、店の売出しチラシにおいて「美しい」「可愛い」という言葉を用いて宣伝され、人々の憧れの的となりました。

千代紙「三角模様」は、大小さまざまなカラフルな三角形が、バランスよく画面に散らされています。夢二は、紫や赤や黄色など明るい色彩を用いたり、モチーフを大胆に反復させたりと、千代紙のデザインに新しい風を吹き込みました。

本展は、夢二に焦点を当てた展覧会として、群馬の県立美術館としては40年ぶりの開催となります。時代を経ても色褪せない、美しく愛らしい魅力に溢れた夢二の作品世界をぜひお楽しみください。

館林美術館 学芸員
野澤 広紀さん

2013年4月から県立館林美術館に勤務。企画展「デンマーク・デザイン 北欧発、豊かな暮らしのかたち」(2018年)、「熊谷守一 いのちを見つめて」(2019年)などを担当

■県立館林美術館(館林市日向町2003)■0276・72・8188■3月21日まで■月曜休館■一般830円、大高生410円、中学生以下無料

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