「赤の力Part1 赤は火の色・生命の色 ―赤い色に願いを込めて―」
「赤」という言葉は、太陽の光が「明るい」ことから来ているという説があります。赤は太陽の色であり、火の色であり、体内に流れる血の色であることから、古来人々は赤い色に生命力を感じ、畏れを抱くと同時に、祈りや願いを込めて赤い色を使ってきたのではないでしょうか。この展覧会では、古くから赤を染めてきた天然の染料や顔料と染織品を中心に紹介しています。
赤を表す色名には、「緋(あけ/ひ)」「紅(くれない/べに)」「朱(しゅ)」など様々な呼び名がありますが、これらの色名は元々その赤を生み出す原料(染料や顔料)を示しています。「緋」はアカネ(茜)、「紅」はベニバナ(紅花)、「代赭(たいしゃ)」はベンガラ(弁柄/酸化鉄を主成分とする顔料)が、それぞれの赤の原料なのです。
遺跡からの出土品により、日本ではアカネの染色は1世紀初頭から、ベニバナの染色は3世紀中頃には行われていたのではないかと考えられています。また、ラックカイガラムシの樹脂は外国から輸入された薬物として正倉院に伝わっています。戦国時代から江戸時代には、コチニール(サボテンにつくカイガラムシの一種)から染めた鮮やかな赤の羅紗地がヨーロッパから輸入され、武士たちの陣羽織に仕立てられました。
本展では高崎市内から出土した、ベンガラで赤く彩色された土器や埴輪なども展示しています。人物埴輪の顔や髪が赤く彩られていることからは、当時の人々が儀式の際などに実際に顔や身体を赤く塗り化粧していたのではないかと想像されます。赤は大切なものを守る色であり魔除けの色だったのでしょう。
また、江戸時代には疱瘡(天然痘)の神を退散させる病気除けの色として赤が使われました。高崎ではなじみ深い縁起だるまも、疱瘡見舞いの品として病気の子供の枕元に置かれたそうです。会場に並ぶ赤い色の作品の数々を通して、人々が赤い色に込めてきた祈りや願いに思いを寄せ、赤の力を感じて頂ければ幸いです。
■高崎市染料植物園染色工芸館(高崎市寺尾町2302-11)■027-328-6808■7月18日まで■午前9~午後4時半(土日は午後6時まで、入館は閉館30分前まで)■月曜休園(■入館料一般100円、大高生80円、65歳以上、中学生以下は無料 ※諸情勢により会期、関連事業などが変更になる場合があります。詳細は同園ホームページ http://www.city.takasaki.gunma.jp/docs/2017082200011/