記念日を作る記念写真

浅田政志《卒業制作/最初の一枚》
2000-2001年 作家蔵

「メモリーズ 写真、絵画、彫刻でたどる記憶の旅」

現在、当館では三輪途道(みちよ)、柳澤裕貴、浅田政志、深井隆、長野順子、松本忠義、水野暁の7人の作家による「記憶」をテーマにした作品を「普通と普遍」「ファミリーストーリー」「さまよう記憶」「2つの作品《台所風景》と《Mother》」の4テーマで紹介する企画展を開催しています。今回はその中から、「ファミリーストーリー」で展示している三重県出身の写真家・浅田政志(1979年~)の作品を紹介します。

地元の高校を卒業後、大阪の日本写真映像専門学校に進んだ浅田は、「1枚で自分を表現する」という課題をきっかけに家族をテーマにした写真を撮り始めます。自分の家族を被写体にし、様々な職業になりきって撮影した写真集「浅田家」、全国各地の家族の姿を撮影した「みんな家族」、東日本大震災で泥だらけになった写真洗浄と返却現場で、自身でもボランティアに参加しながらその活動に励む人々の姿を記録した「アルバムのチカラ」などを発表。2020年には「浅田家」「アルバムのチカラ」を原案にした映画「浅田家!」が公開され大ヒットしました。

浅田政志《みんな家族/益本家》2009年 作家蔵

自分自身の記憶をたどる時、思い出すのは体験した出来事であったり、出会った人だったり、心に浮かぶ景色は様々。それら積み重ねた記憶たちが現在の自分を構成する要素となっていますが、改めて対峙する機会は多くないかもしれません。浅田は人生の岐路に立った時、自分の核に〝家族〟を見出しました。「一生に1枚しか写真が撮れなかったら」‐そこで思いついたのは生まれ育った場所で、ともに時間を過ごした家族との記憶でした。

「こうでありたい」と願う想いが時には記憶を書き換えることもありますが、浅田は実際にあった出来事も、イメージする未来の形も全て含めて、1枚の写真に収めています。過去、現在そして未来への家族の物語を紡いだ写真は、きっと大切な人を思う気持ちや自分を見つめるきっかけになるかもしれません。

 

高崎市美術館 学芸員
谷津 淑惠さん

跡見学園女子大学文学部美学美術史学科卒業。2000年より高崎市美術館に学芸員として勤務。「3は魔法の数字」「FLOWER展」などを担当。

■高崎市美術館(同市八島町110‐27)■027・324・6125■8月22日まで■午前10時~午後6時(金曜日は午後8時まで、入館はいずれも閉館30分前まで)■月曜日休館(8月9日は開館し、翌10日は休館)■一般500円、大高生300円(中学生以下、65歳以上無料)■館内での「密閉・密集・密接」な状況を防ぐため、土・日・祝日および混雑時は、入室制限を行う場合があります。詳細は高崎市美術館ホームページhttps://www.city.takasaki.gunma.jp/docs/2014011000353/をご確認ください

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