桑原と教え子たちによる競演を楽しんで

常設特別展「桑原巨守と教え子たち」

桑原巨守の彫刻作品

渋川市美術館は2000年12月の開館以来、1階の常設展示室で具象彫刻家・桑原巨守(1927~93年)の作品を紹介してきました。当館は移転計画を進めており、現在の場所で桑原作品を展示するのは最後となります。会場には桑原の木彫と共に、彼の教え子たちの作品も並びます。

桑原は、「自然讃美」を提唱し、上州のからっ風や燦々と降りそそぐ太陽の光を女性像で表現しました。東京美術学校時代には、木彫家・関野聖雲(1889~1947年)に師事。関野は、上野公園の西郷隆盛像で知られる彫刻家・高村光雲(1852~1934年、《智恵子抄》で知られる詩人で彫刻家の高村光太郎は息子)の弟子にあたり、よって桑原は、光雲の孫弟子ということになります。

桑原自身の生涯の仕事は、粘土を用いて制作する〝塑造〟でしたが、生涯を通して木彫制作も平行して続けられました。木との対峙は、粘土で制作する〝塑造〟とは違い時間を要するもの。木の塊を日々眺めながら、何らかの形を木が語りかけてきてから彫り始めることが多く、居間の一角には木の塊が置かれ日々、木との対話を楽しんでいたといいます。木彫制作で培われた手法は、塑造での制作にも見え隠れしています。今展では、自身の塑造彫刻を元に制作した木彫作品も展示しています。

そして桑原には、作家として精力的に活動しながらも長年にわたり大学の教壇に立ち、多くの後進を育てた教育者としての一面もあります。1967年、女子美術短大の造形科彫塑教室を立ち上げ、その後、1971年に女子美術大の教授となり1993年に退職するまで、多くの教え子たちを送り出しました。女子美術大名誉教授であり、二科会で活躍する彫刻家・津田裕子を筆頭に多くの教え子たちが国内外で創作活動に励んでいます。

展示会場には、桑原と共に教え子たちの作品も並びます。なお、当館は今後、市役所第二庁舎への移転を予定しており、今月末までで現在の場所での開館業務を終え、2023年度の再開を目指し、それまでの間、展示業務はお休みとなります。桑原と教え子たちによる師弟の競演を会場でお楽しみ下さい。

渋川市美術館・桑原巨守彫刻美術館 学芸員
須田 真理さん

1972年渋川生まれ。女子美術大学大学院修了。00年12月開館の渋川市美術館・桑原巨守彫刻美術館開設準備から携わる。現在、常設展や企画展などを担当

渋川市美術館(同市渋川1901・24))■0279・25・3215■3月31日まで■午前10~午後6時(入館は午後5時半まで)■火曜休館■観覧料200円(中学生以下、65歳以上の方、障害者手帳をお持ちの方は無料)

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