初紹介!「ディーン・ボーエン展」群馬から巡回

「 ディーン・ボーエン展 オーストラリアの大地と空とそこに生きる私たち 」

《黒いカナリア》Black Canary(2015年 リトグラフ、紙 ギャルリー宮脇蔵 Collection Galerie Miyawaki, Kyoto)

オーストラリアを活動の拠点とするディーン・ボーエン(Dean Bowen 1957年~)を日本の美術館で初めて紹介する展覧会が、全国各地を巡回します。そのトップバッターとして、今夏、当館で展示が始まりました。

ボーエンはその豊かな想像力とユーモアで、オーストラリアの風土と自然、空、そしてそこに暮らす人々や生きものを独自に表現してきたアーティストです。版画や油彩、水彩、ブロンズ彫刻、アサンブラージュやアーティストブックといった、さまざまなジャンルにわたる彼の作品は、一度見たら忘れられない、心惹かれるものばかりです。例えば、《黒いカナリア》では、風船のように丸くふくらんだ鳥と、向き合う小さなテントウムシが描かれています。ユーモラスな姿形だけでなく、呼応する可愛らしいドット模様、複雑な表情を見せる刷りのテクスチャ、そして明るく穏やかな空気感など、とても魅力的な要素がつまっています。

《ハリモグラ》Echidna (1998年 エッチング、アクアティント、ドライポイント、紙 ギャルリー宮脇蔵 Collection Galerie Miyawaki,Kyoto)

彼の作品の多くに見られるやや茶褐色がかった色遣いは、砂のような、乾いた風のような、まるで大地の色にも感じます。また、生命力にあふれた野性的な印象も受けるでしょう。日本や他の国のアーティストではなかなか表現できない、まさにオーストラリアの、南半球の色と言えるかもしれません。

本展では広い展示室にぎっしり150点、ボーエンの作品が並びました。さまざまな生きものたちが登場する作品をとおして、彼の自然や命への温かなまなざしをおたのしみください。

なお、本展は巡回展であり、次は徳島県立近代美術館(9月16日~12月10日)での開催を予定しています。

群馬県立近代美術館 学芸員
太田 佳鈴 さん

1984年生まれ。2016年より群馬県立近代美術館学芸員、専門は日本近世美術。担当展覧会は「日本美術のススメ キーワードと巡るぶらり古画探訪」(2017年)、「関東南画のゆくえ 江戸と上毛を彩る画人たち」(2021年)など。

群馬県立近代美術館
■高崎市綿貫町992・1 ■ 027-346-5560
■8月27日まで
■午前9時半~午後5時(入館は午後4時半まで) ■月曜休館(17日、8月14日は開館)、7月18日は休館
■一般800円、大高生400円、中学生以下、障害者手帳などをお持ちの方とその介護者1人は無料
https://mmag.pref.gunma.jp

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