修験道の歴史は古く、今から約1300年前に役行者によって開かれた教えで 山岳信仰や自然崇拝を基にそこへ仏教や道教、密教的要素、土着の民族信仰が混ざり合わさった宗教です。
修験道の教えに則り、山で厳しい修行を積み、困っている人に優しい手を差し伸べる事のできる自分を作る為に敢えて苦行を行っているのです。山に臥して修行をする事から山伏と呼ばれるようになりました。私も京都の修験道本山派「総本山聖護院門跡」に学僧として入門し、2年間修行した群馬県内最年少の女性山伏です。
そんな長く古い歴史を持つ山伏の教えが、未来を見据え、持続可能な社会の実現に向けて社会の課題解決に取り組む目標を掲げたSDGsに繋がりがあると知りました。先日、山伏として交流のある僧侶の1人から、面白いご指摘をいただきました。
仏教の五戒の中に「不殺生」という教えがあります。有名な戒律ですから、普段仏教に馴染みのない方もご存知かも知れません。
字の通り、命を奪ってはいけないという教えです。しかし 京都での修行中に「ただ命ある物だけの話ではない。生命のない物、道具や物を大切に使う事もその物を『生かしている』事になるんだ」と教えていただきました。フードロスや十分に使えるものが捨てられてしまう問題を解消する取り組みもSDGsでは重要です。さらに、「誰も置き去りにしない」という目標もSDGsでは掲げています。「生命のある物もない道具や物も寿命があり、持続可能な社会のために大切に使う」という仏教の考えは、物や資源に溢れていて簡単に手に入る現代だからこそ、もう一度身の回りの便利な生活を見直す機会になるのではないでしょうか。