「苦難は乗り越えられる者にしか与えられない」という言葉がある。
今季からB1で戦うサンダーズも、ケガ人続出という苦難に見舞われている。だが、その状況が、名門・筑波大バスケットボール部の主将を務め、「大学ナンバー1ガード」とも言われた菅原暉の成長を促した。
同大4年生だった今年1月、特別指定選手としてサンダーズへの加入が発表されたが、約1カ月前の全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)準々決勝で足の甲を痛めており、チームへの合流が遅れていた。
リーグ終盤の4月にはようやくベンチ入りをしたものの、次のシーズンに向けたコンディション調整を優先したため出場は叶わなかった。だが、その甲斐もあり、今季は開幕戦から万全な状態で試合に臨んでいるが、一方でB1の強度の高いプレーに馴染むのには時間がかかっていた。
菅原を奮起させたのは、同じPGのポジションでスタメンを張る五十嵐圭のケガだった。11月7日の名古屋D戦で五十嵐は右足関節内外側靭帯を損傷。10日横浜戦から戦線離脱を余儀なくされていた。加えて、PGの笠井康平もケガを抱えており、徐々にコンディションを戻している状態。チームは「司令塔にケガ人続出」という危機的状況に陥ったが、これが若手の成長につながった。
その横浜戦では、今季最長の27分のプレータイムを得て、3ポイントシュートを4本中3本、2ポイントシュートを2本中2本という高確率で決め、チームの勝利に貢献。潜在能力の高さを見せつけた。試合後、「今シーズンからB1でプレーしていますが、最初は受け身の部分もあったりして、チームに貢献できませんでした。(五十嵐)圭さんがケガをして、やらなきゃいけない自覚も芽生え、積極的に周りを生かしながら、自分で効果的に点数を取りにいけるように考えていました」と、これまで活躍できなかった理由を語った。
ルーキーイヤーの今季、菅原が目指すのは「新人賞ベスト5」にチームメートの杉本天昇と2人で選ばれること。今後も、横浜戦で見せた活躍ができれば、その目標も現実となり、チームの目指す「チャンピオンシップ(CS)進出」という夢にも近づけるはず。菅原の奮起が、現在、東地区7位のチームを上位へと引き上げるカギとなりそうだ。(星野志保)