第3回 七施精舎「滝修行」

第3回  体験編 七施精舎「滝修行」

怠け心が落ち、生まれ変わったような爽快感と達成感!

落差約40m。「日本の滝100選」の一つ、棚下不動の滝

滝に打たれて精神を鍛える滝修行が8月28日に渋川市旧赤城村地区の棚下不動の滝で行われた。事前に募集記事を掲載したところ、主催する仏教団体・七施精舎に「一緒に参加しませんか」と声をかけられた。ちょうど今年、人生の折り返し地点を迎える筆者は、迷った末に参加を決意。人生初の滝修行をレポートする。

一、まずは冷水に慣れよ
7月上旬の事前説明会では、同団体を主宰する僧侶・浅川煕信さん(70)が先達(指導者)として当日の修行の流れや準備、心構え、礼儀、所作などをレクチャー。「1人2回ずつ入ります。練習として毎日、水を浴びたり、足を水に浸すこと。無理だと思う人は参加をやめてください」の厳しい言葉に身が引き締まる。と同時に、荒行が無事成し遂げられるのか、不安に襲われる。真夏とはいえ、水温は低い。頭に冷水を浴びるトレーニングは行う勇気がなかなか出ず、家で始めたのはわずか3日前だった。

二、修行の場を浄めよ
前夜は緊張してなかなか寝付けなかった。はっきり言って準備不足だ。当日は朝から晴れ、予想最高気温(前橋)36度の猛暑日。指導により食事は2日前から肉・魚・卵・乳製品を絶ち、豆腐と野菜、おにぎり、くだものなどで腹ごしらえをした。

午前10時。集合したのは17歳の女子高校生から82歳の高齢男性まで計16人。まずは、修行する場を浄めるため、滝の裏手に建つお堂や滝つぼ周辺の掃き掃除を行った。これも修行の一環だ。その後、身支度を整え準備運動を行うと午後1時。間もなく本番だ。お堂の前で先達が祈祷など一連の儀式を執り行い、いよいよ滝へ。

三、水圧に負けず、集中して絶叫せよ

滝に入り修行する筆者と浅川先達(全日写連会員黒﨑守輝さん撮影)

滝修行では「南無不動明王」と7度唱えることになっている。「南無」は「帰依」の意で不動明王への尊敬の念を表すという。不動明王は密教の世界で諸仏の最高位「大日如来」の化身とされ、怒りの姿で煩悩や厄災を滅ぼし人々を救済する仏様。「腹の底から声を出し、絶叫せよ」と指導されていたが、家では近所迷惑を心配して練習を控えていたため、ほぼ「ぶっつけ本番」だ。

滝を間近で見上げてみると、流れ落ちる自然の水の力に圧倒された。順に滝つぼへ歩みを進める同志たちの勇壮な姿を見て心を奮い立たせる。これまでぬくぬくと生活してきた自身に喝を入れ、次の半生に向けて心機一転させたい、という強い気持ちでいざ、滝の中へ。「最初は少なめの水量で」と聞いていたが、それでも水の先端が次々と頭に刺さる。先達の合図で思い切って叫んでみた。ここまでくると恥ずかしいなどと言っていられない。「南無、不動明王ー!」

2回目は多めの水量。容赦ない水圧に立つのがやっとで目も開けられない。頭に巻いたさらしが叩き落とされる。が、声は出さねばならぬ。気持ちを集中させ「南無、不動明王ー!」今までの人生で出したこともないような大声で7度、最後まで叫び切った。

滝から出ると、何とも言えない爽快感、達成感、満足感、そして、自分の中の怠け心が落ち、生まれ変わったような心地よさ! 滝修行の機会に出合えたことに感謝。南無、不動明王!

あれから2週間。毎日、心穏やかに過ごしている。滝行のご利益か、些細なことでもイライラしなくなった気がする。また参加したいと思っていたが「次回は冬かも」と聞き、また弱い心が顔を出している。「まだ修行が足りないぞ!」という声が、どこからか聞こえる。    (上原道子)
■問い合わせは七施精舎(027-322-8166)へ

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