自主性を尊重する指導の鍵は、バレーボールを大好きにさせること(vol.1)

前橋商業高校男子バレーボール部監督 小林潤

前橋商業高校(前橋市南町)男子バレーボール部は、今年5月の高校総体で3年ぶり11度目の群馬の頂点に立った。小林潤監督が前商に赴任してから9年間に、新人大会、高校総体、インターハイ予選、選手権(春高)予選を含め、これまで10度の優勝を手にしている。

小林監督が重んじるのが選手の自主性である。練習メニューは、いつも選手と話し合いながら決める。大会が近づけば、「試合に勝つためには、ここが足りないよね。ここがよくなれば勝つ可能性が上がる。こういう練習をしたらどうか」と投げかけるだけ。全体練習後の自主練は完全に選手個人に任せる。とはいっても、選手として力をつけるためのヒントを与えた上でだ。

指導で欠かせないのが目標設定である。今年の3年生の代は、新人大会、高校総体、インターハイ予選、選手権(春高)予選の4大会での優勝を掲げた。新人大会はコロナ禍で中止になったが、残り3大会を目標に。そこに小林監督が付け加えたのが、「失セット0の完全優勝」。セットを1つも落とさずに優勝をすること。5月の高校総体では、目標の1つを「失セット0」でクリアした。

県外の強豪校との練習試合も、選手の自主性を伸ばすのに役立っている。「全国大会に常に出ている強豪校は、こういうことをやっている」と、何が足りないのかを自覚させる。

自主練では、選手たちはそれぞれ自分たちの強化したい部分、足りない部分に取り組む。だが、中には好きな練習だけをする選手もいる。例えばピンチサーバーで試合に出る選手が、自主練でスパイクを打っているとする。小林監督は「何でスパイクの練習をするの?」とは言わない。黙って見ているだけだ。試合のときにピンチサーバーで出場してサーブをミスしたら、「なぜサーブの練習をしなかったのか?」と投げかけて、何をするべきかを気づかせる。

「生徒たちは、バレーボールが大好きで、勝ちたいという強い気持ちを持っています。だからこそバレーボールをもっと好きになってもらえば、『あれやろう、これやろう』と、自ら考えて練習するようになります。今は情報量が多いので、分からないことがあれば自分ですぐに調べられます。自主性を伸ばす指導のほうが、成長スピードは絶対に速いと思うんです」と、自らの指導に自信を見せた。
※次号は小林監督の指導の原点に迫る
(星野志保)

こばやし・じゅん

1975年伊勢崎市出身。伊勢崎東高校(現・伊勢崎高校)から国士舘大学へ進学。卒業後に教員となり、西邑楽高校に赴任。女子バレーボール部の顧問を6年務めた後、高崎工業高校で10年間男子バレーボール部を指導。前橋商業高校男子バレー部の顧問になって、今年で9年目を迎える。自主性を大切にする指導は、中学、高校、大学時代の自らの体験によるもの。

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