群馬ダイヤモンドペガサス監督 牧野 塁
チーム内に競争を生み出し、選手の能力を引き上げる指導法で結果を出しているのが群馬ダイヤモンドペガサスの牧野塁監督だ。就任2年目の昨年は、BCリーグの頂点に立っただけでなく、高崎出身の捕手・速水隆成(桐一卒)が育成ドラフト2位で北海道日本ハムファイターズに指名され、9年ぶりのNPB選手誕生に導いた。
指導で特徴的なのが、出場選手を固定せず、登録選手と練習生の垣根をなくしたことだ。練習生でも頑張っていれば、選手登録をしてもらい試合に出るチャンスが与えられる。一方で、登録選手が練習生に契約変更になっても、また頑張れば登録選手に戻れるので、いったん自分を見つめ直す機会となる。指導者が一人ひとりをきちんと見て評価していることも、選手のモチベーションを高く維持することにつながっている。
こうした指導の「原点」は、自らの経験にある。オリックスからトレードで阪神に入団した牧野監督は、生え抜き選手を試合で使う風潮のチームにおいて、結果を出しても試合に出るチャンスをもらえず悔しい思いをした。「自分がやられて嫌だったことは、他の人にはしない」を信条に、指導者になって「頑張っている選手を起用しよう、そしてチャンスを与えよう」を実行する。ただ、勝負の世界では努力をしているだけでは結果は出ないと知ってはいる。「頑張っていても、その集中力は長くは続きません。例え、力が少し足りなくてもチャンスを与えたい」と選手の気持ちも理解する。
選手には、「チャンスは少なくても、どこに落ちているか分からないので、準備をすることが大切」と伝えている。「ベンチでただ試合を見ているのか、それとも試合を見つつ、いつ代打で打席に立ってもいいように、バットを振って準備をしておくのかで、1プレー目からの落ち着きが違ってくるんです」と話す。
今年は、7~8月にかけて新型コロナに感染した選手が続出した影響で、チームは善戦しながら惜しくもプレーオフ進出を逃した。しかし、牧野監督が3年間で築いたチーム内競争という〝レガシー〟は、今後も選手の中で根付いていくだろう。それがチームの成長につながっていくはずだ。 (星野志保)