ペットを家に迎えた日を家族で祝うイベントを「うちの子記念日」と呼ぶ。もうすぐ愛犬「レン」の10回目の記念日だ。昔飼っていた「ピー」が私の不注意で行方不明になって以来、犬を飼うことをためらっていた。しかし、心のどこかでもう一度責任を持って飼うことができればとも思っていた。ある日、店で売れ残っているレンを見た瞬間、ピーの供養になればと家に迎えることを決めた。
約20年ぶりの「犬育て」。レンは初日、知らない場所と人間に警戒し、ぶるぶる震えていた。一方、飼い主の方は、食べものや手入れ法など昔とは勝手が違ってとまどう毎日。不安な気持ちが伝わったのか、私の言う事は聞かず夫の後をついてまわる。散歩に誘っても歩こうとしない。うまくいかない日々に心が折れそうに。戸惑いながらもピーの供養の意味も込め、真摯にレンと向き合った。
2カ月が経った頃だろうか。ある日突然、散歩を始めた。気づけばそばに来て甘えてくれるように。以来毎日元気に走り回り、帰宅時にはとびきりの笑顔で迎えてくれる。レンを通して夫婦の会話や笑うことが多くなった。
この10年、数えきれない幸せと学びをもらった。ご褒美に好物の焼き芋を用意してお祝いしよう。これからも家族で楽しく年を重ねていきたい。
(森作理恵)