ウクライナ応援コンサートを開催するなど、絶えず心に炎を燃やし続ける81歳の小林研一郎さん。3月末で群馬交響楽団のミュージックアドバイザーを退任する。2019年4月に就任し、本拠地を高崎芸術劇場に移してからも定期や特別演奏会、移動音楽教室など精力的にタクトを執り、コロナで苦しむ群響を3年間導いた。
私が武蔵野市に住んでいた小学生の時、学校の皆とコバケンの移動音楽教室に参加したことがある。会場は、当時「東洋一の音楽の殿堂」と評判だった杉並公会堂。コバケンは、集中を切らさない魔法の指揮でオーケストラを束ねていた。スメタナの「わが祖国」や下校の音楽だったドボルザークの「新世界から」を演奏したほか、楽器紹介をするコーナーがあって、楽しく、本物に触れる貴重な機会になった。
「誰が指揮をしても音楽は同じ」という考えもあるかもしれないが、群響の演奏を色々聴くと、やっぱり指揮者によって音楽が大きく変わるように思える。コバケンの指揮は、群響を大いに盛り上げ、聴く者を楽しませてくれた。すでに完売の3月19日の576回定期演奏会がアドバイザーとして最後の公演となるが、今後もまたコラボが実現することを期待している。
(谷 桂)