コロッケ [夏休みに娘が帰省した。「ママの作ったコロッケが食べたい」と…]

上州日和タイトル

夏休みに娘が帰省した。「ママの作ったコロッケが食べたい」と、いきなり夕飯のリクエストが飛んできた。「この暑い日に、油を使ってコロッケか」とブルーになる。自宅で揚げ物を作りたくなかったが、家計には優しい要望だったのでしぶしぶ取り組む。

ジャガイモをゆでてつぶし、ひき肉とタマネギを炒めて混ぜ合わせる。ウチでは、俵型ではなくいつもボール型に成形。小麦粉に卵、パン粉をつけて油に滑り込ませ、「ジュワー」が静かになって、こんがりキツネ色に変わったら、シンプルコロッケの出来上がり。

私が思春期だった80年代は、女性の自立や社会進出が課題とされ、新しい女性像を社会が模索していた頃。自分も進学や人生に迷っていたが、キャリアに磨きをかけて自立するカッコイイ女性には最初から、なれそうもなかった。悩み抜いた末、決めた目標が「仕事もするけど、コロッケを作れる母ちゃんになろう」だった。「コロッケを揚げて、みんなで笑いながらバクバク食べたい」を目指す方向にした。

おいしいジャガイモのおかげでコロッケは好評。「これだよね。母の味」と娘からうれしい言葉をもらった。やったー、目標だったコロッケ母ちゃんになれたかもしれないと一人喜んでいる。

(谷 桂)

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