3月11日、モヤモヤやあふれる気持ちを抑えられず、映画「すずめの戸締まり」を観に前橋の映画館に足を運んだ。新海誠監督の大ヒット映画は、11月から公開され、すでに4カ月。
映画の主人公は、九州の町で暮らす高校生の岩戸鈴芽(すずめ)。登校の途中ですれ違った大学生の宗像草太は、地震を起こす扉を閉めて鍵をかける「閉じ師」。廃墟という「人の心の消えたさみしい場所」の扉から暴れ出て、地震を起こしている赤黒い「ミミズ」に、すずめと草太が勇敢に立ち向かい、「戸締まりの旅」をする物語だ。九州や神戸、東京、東北に加えて、群馬の四万温泉や中之条町の旧太子駅など美しく親しみある景色も楽しめる。
新海監督が描いたフィクションではあるが、映画の中で鳴り響く、「地震です。地震です」のアラーム音に、あの日を思い出した。娘の中学校の卒業式を終えて、午後から出勤し、会社で急な揺れに見舞われた。押し寄せる津波で家や車が流される光景や福島原発のメルトダウンなど信じられない映像が毎日、テレビに映し出されておののいていた。
全国では、亡くなった人、行方不明の人が約2万2千人。今も避難している人は、約3万人。震災を知らない世代も増えてきた。映画を見終わっても、決して忘れないように、そして新しい世代の人にも語り継ぎたいと気持ちを新たにした。
(谷 桂)