農業カメラマン網野文絵のKnow Life
熊川早苗さん(前橋) 奈良恵理さん(前橋)
今回ご紹介するのは『さり’ー’農園』の熊川早苗さん(37)と 奈良恵理さん(39)です。先日、私は前橋市元総社でケール畑を見つけ、写真を撮らせていただくためにご挨拶したのが出会いのきっかけです。快く撮影を承諾してくださって、お野菜の話を伺っていたら、なんとも興味深い就農秘話が始まったのです。
熊川さんは二児の母。奈良さんは三児の母。2人とも結婚を機に仕事を辞め、子供が産まれてからしばらくは、専業主婦として、育児に励んでいたといいます。出会ったのは地域子育て支援センター。そこは幼稚園に入る前に子どものお友達を作ったり、親同士の交流や子育て相談ができる場所です。初め2人は顔見知りになった程度でしたが、翌年から同じ幼稚園に通うことが分かると次第に親しくなってゆきました。
育児を始めた時、子供の成長に日々感動する反面、自身は社会に取り残された感覚になったと2人はいいます。そう思ったのは、家族以外の人とのコミュニケーションが減ったからかもしれません。熊川さんは、このもやもやを解消すべくパートタイムで社会復帰を試みました。しかし実際に就職となると、子供の急な都合で仕事に穴をあけることに責任を感じて就職の一歩が踏み出せずにいました。
この時、力になってくれたのは農業経験がある現在会社勤めの旦那さん。農業なら子供の行事に合わせて仕事ができる上に、畑にテントを張って目の届く場所で子供を遊ばせることもできます。「これを仕事にしよう!」と、熊川さんは旦那さんにアドバイスをもらい、野菜を作り始めました。
それから約1年ほど経ったある日、熊川さんは、奈良さんの子供が野菜を食べてくれないという悩みを聞きました。「じゃあ一緒に野菜を作ろうよ!」出会ってから3年目、熊川さんのお誘いで奈良さんも就農することにしました。
2人は早苗の「さ」、恵理の「り」という名前の一字と野菜で子供を笑顔したい気持ちを顔文字に込めて「さり’ー’農園」をスタートしたのです。
おやつにぴったりな干し芋用のサツマイモやフワフワな食感の「とろなす」、レンジで調理できるケールなど、ママ目線で料理しやすい品目を栽培すると、野菜が苦手だったはずの子供たちが自ら食べるようになり、今ではお友達に「ママが作ったお野菜は東京でも売られているんだよ!」と嬉しそうに話をしているようです。これからも主婦目線の農業と子育てを両立し、子供や消費者を笑顔にしていただきたいです。