ファンと共に進化していく花苗つくり(vol.12)

農業カメラマン網野文絵のKnow Life 

 

サトウ園芸 佐藤勲さん(高崎)

消費者の好みを取り入れて、佐藤さんのパンジービオラは毎年進化してゆきます

2020年から書かせていただいている農業コラムもついに3年目。いつも読んでいただきありがとうございます。

さて、みなさんは花苗家(かびょうか)という言葉をご存知ですか?花苗を生産し、お客さんが求める花を作り出す人のことです。今回は、華やかで長持ちする花苗が、世界でも知られる花苗家、サトウ園芸の佐藤勲さんのお話です。

佐藤さんは高崎で野菜農家をする両親のもとに生まれ、物心がついた時から家を継ぐ決意をしていました。大学卒業後、アメリカ コロラド州で2年間の農業研修を受けました。最先端の農業技術を手に入れるために花苗の生産者のもとで、苗木の栽培基礎を学んだのです。佐藤さんは、親元を離れアメリカに行き、花苗の知識を習得した経験について、「やればできるという自信に繋がった」と語ります。

帰国して間も無く、「人に喜ばれる花苗つくり」をビジョンとして25歳でサトウ園芸を創業しました。佐藤さんは、お庭で苗を長持ちさせるため、水や栄養を吸収する「根っこ」をもっと元気にしたいと考えるようになり、アメリカでの経験を生かして、日本の気候に適したパンジー・ビオラに向き合いはじめました。

何をすれば根が良好に張るのか、納得のいく灌水技術に15年を要したとのこと。次第に花の展示会で賞を獲得するようになり、メディアやお客様の口コミで商品が知れ渡りました。その時、佐藤さんは、時代に沿った花こそ人に喜ばれる、サトウ園芸の花はファンと共に進化していくと実感しました。

今では年に一度、ファンの方々のために、「パンジービオラの見学会」と称して、全国各地からその年の秋に出る新品種を見ていただくイベントを自社で行なっています。神秘的な色合いのビオラヌーヴェルヴァーグ、一世を風靡したパンジードラキュラ、佐藤さんの花には人を惹きつける力があります。それは「この色合いが好き」「この花はお庭にぴったり」というファンの声に耳を傾けているからなのです。

ドラキュラ:この色合いが見れるのは今年の秋〜です

こうした努力の甲斐あって、ついに昨年から第二の故郷であるアメリカ・コロラド州で開発中の苗の試験栽培が始まりました。今後は、自身のオリジナル商品を生産してアメリカで流通することを目標に、惜しみない努力を続けます。思ったことは実現するという強い信念を持って、これからも世界中のガーデナーの心を躍らせるでしょう。

 

あみのふみえ/フォトグラファー

もともと野菜が苦手だったが、畑で感じた匂いや景色に衝撃を受ける。カメラマンとして農家や畑・作物を撮影するうちに、野菜が好きになる。新しい野菜の“見かた”を発信することがライフワーク。
5月中旬に写真絵本「やさいのはな なんのはな?」(岩崎書店)を出版。6月2日から、イオンモール高崎の未来屋書店で写真展開催。

■インスタグラム: @amino_fumie
■HP: www.knowlifephotos.com

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